(ふぅ~・・・今日も一日ご苦労さんっと・・・)
――バタンっ!
僕はカーポートの中に愛車を入れると、1人大きく息をつきながらそのドアを閉めた。
念願のマイホームを手に入れたのは良いが、会社までは愛車に乗って1時間と少し・・・最初の頃はドライブ感覚で楽しい通勤をしていたものの、さすがに毎日だと疲れる。
そんな事を考えながら、車のドアをロックした時、向こうから近寄ってくる人影に気が付いた。
暗くて見えなかったが、その姿が10メートル程先まで来た時に、それがお向かいに住む鈴木さんのお宅の娘さん・・・沙月(さつき)ちゃんである事が解った。
「ああ・・・沙月ちゃん・・・こんばんは」
僕は軽く会釈をしながらそう言った。
「こんばんは・・・おじさんっ!」
沙月はそう言い返しながら尚も僕に近づいてくる。
そして、彼女はついに我が家のカーポートの中まで入ってきた。
「どうしたの?・・・沙月ちゃん」
僕はそう訊ねた。
しかし、こんなに近くで彼女を見るのは久しぶりだ。
彼女は今年で高校2年・・・いや、3年生だっただろうか。
このくらいの年齢の娘が、しばらく見ない間に成長するのは当たり前の事だろうが、僕は成長そのものよりも、彼女の風貌があまりに変わっている事に驚いた。
下着が見えるのではないかと思うくらい短く詰められた制服のスカート。
だらしなく開いた胸元からは、大人顔負けの谷間が少し見える。
それに、去年の同じころよりも一際明るい茶色に染められた髪・・・。
さらに、この匂い・・・香水でもつけているのだろうか。
「おじさんっ・・・」
風貌は違っても、沙月は人懐っこい昔の笑顔のままで僕にそう話しかけてきた。
(おじさん・・・か・・・)
まぁ、僕は今年で42歳だ。
17、8歳の女の子からおじさんと呼ばれるのは当然だ。
「ちょっと相談したい事があるんだけどな・・・」
「僕に・・?」
沙月は小さく頷いて辺りを見廻した。
「い、いいけど・・・ご両親には相談できないのかい?」
「うん・・・出来ないの・・・」
「そう・・・」
余程言い難い相談なのか、彼女は両親には相談できないと言った。
それ程の内容の相談を、向かいに住んでいて、少し顔見知り程度の僕にしてくれると言うのを不思議に思ったが、ただ素直に頼られた事に嬉しさも感じていた。
「おじさんの家・・・誰か居る?」
「ああ・・・カミさんと子供が居ると思うけど」
「そっか~・・・」
「ここで話せないのかい?・・・良かったらその辺のファミレスにでも行こうか?」
「ううん・・・いいの・・・そんなに時間かけてらんないから・・」
「え?・・・時間・・?」
「ああ、こっちの話・・・。ねぇ・・・おじさんち、裏に物置があったでしょ?」
「ああ・・・小さいけどね」
「あそこの陰・・・誰にも見えないよね・・・」
「まぁ、ウチの陰になってるし、通りからも見えないと思うけど・・・どうして?」
「ううん・・・いいの、いいの・・・そこで話そっ!」
沙月は、そう言うとさっさと僕の服の袖を引っ張るようにしてカーポートの脇を抜け、我が家の物置まで来ると少し周りを見渡した後で、その裏へ僕を引っ張りこんだ。
「ちょ、ちょっと・・・沙月ちゃん・・・どうしたの・・・」
僕は力任せにそこへ引っ張っていく彼女を振りほどく事も出来ずに、とにかくされるままに後を着いていった。
「沙月ちゃんってば・・・どうしたんだい?」
「うん・・・ここなら大丈夫だね・・・」
「だから何がだい?説明してよ、おじさんに」
「ここなら誰にも見られないねって・・・そう言ったの」
「まぁ・・・そうだね・・・簡単には見つからないね、こんな所・・・」
僕は何が何だか解らないまま、そう言った。
「で、相談って何だい?・・・おじさんでも力になれると良いけど・・・」
「うん・・・実はね・・・おこづかいが欲しいの・・・」
「は?」
「だから・・・おこづかいが必要なの・・・それも明日までに・・・」
「明日・・・何かあるのかい?」
「うん・・・ちょっと約束があるんだけど、今日、お金使っちゃって・・・困ってるんだ・・・」
(こ、これはカツアゲか?・・・)
混乱する頭でそんな事を考えたが、女の子が1人でこんな所に40過ぎとは言え、立派な男性を連れ込んだ所で力では敵うまい。
「そ、それはお父さんかお母さんにお願いしいた方が良いんじゃないのかい?」
僕は至極当然の事を目の前の沙月に言ってやった。
「それが頼めないんだよ~・・・」
そんな事はあるまい。
沙月のお父さんもお母さんも2人ともきちんと働いている。
子供は沙月1人だけで、そうそう生活が苦しいとも思えない。
高校生にあげるおこづかい程度に困る家庭には到底見えないのだ。
「そう言う事じゃなくって・・・おこづかい頂戴なんて言ったら、また何に使ったのかとか、どこへ行く気なんだってうるさいから・・・さ」
「それは沙月ちゃんの事が心配だからそう言うんだよ・・・」
「おじさんも沙月にお説教するの・・・?・・・」
沙月が悲しそうな目で僕を見上げる。
「あ、いや・・・おじさんはそんな説教なんて、図々しい事はしないよ・・だけど・・・」
「良かった・・・じゃあ、お願いっ・・・」
「沙月ちゃん・・・説教はしないと言っておいて何だけどね・・・一つだけ言わせてくれ。お金を稼ぐと言うのは大変な事なんだよ・・・だからね・・・」
「解ってるよ・・・そんなの・・・別にタダで頂戴って言ってる訳じゃないんだから・・・」
「どういう事だい?・・・」
僕は益々意味が解らなくなってそう訊ねた。
「フェラ、1回5千円でどう?・・・本当はもう少しもらうんだけど、おじさんだからご近所割引でサービスだよ・・・」
「フェ・・・!・・・」
僕は驚きつつも、ようやく状況を理解した。
そう言う事か・・・。
いわゆる援交みたいなものか・・・そうやって、口で男性を満足させてやってお金を貰う・・・しかも、そのセリフから察するに沙月はそう言った事を普段からしているようだ。
「さ、沙月ちゃん・・・」
「お説教は聞きたくないよ・・・」
「でもね・・・沙月ちゃん、そう言う事は・・・」
「大声上げるよ・・・」
「え?・・・」
「おじさんにここに連れ込まれたって言って大声上げるよ・・・」
「な、何を言ってるんだい。そんな事してないじゃないか」
「でも、ちょっと制服を乱して悲鳴を上げたら・・・ご近所の人はそう思わないかもよ・・・」
何という事だ。
僕はもう、ここへ連れてこられた時から敗北する事が決まっていたのだ。
彼女の言うとおり、僕がどんなに弁明しても彼女が乱れた服装で悲鳴を上げたら困る。
きちんと調べてもらえば、それが冤罪だと言う事は解るかもしれないが、冤罪だとかそんな事は問題じゃない。
そう言う疑いをかけられたと言うだけで、この辺には住めなくなる。
だから、そう言う意味で僕の敗北は決定していたのだ。
「解ったよ・・・5千円でいいんだね・・・」
僕はスーツの内ポケットから財布を取り出して、そこから千円札を5枚抜き取って彼女へ渡した。
「ありがと~、おじさんっ!・・・じゃ、早速・・・」
そう言って、僕の前に跪こうとする彼女。
僕はその彼女の腕を掴んで力任せに立たせた。
「そんな事はしなくていい・・・そのお金はあげるから、早く帰りなさい・・・」
僕はそう言った。
お金を払って高校生に猥褻行為をさせる訳にはいかない。
それでは本当の犯罪者だ。
「そう言う訳にはいかないよ・・・そしたらおじさん、ウチのお父さんにチクるでしょ?」
「こんな事、君のお父さんになんか言えるもんか。気の毒過ぎて言えないよ」
「そんなのウソかもしれないもん・・・だからダメ・・・」
沙月はそう言うと再び僕の前に跪(ひざまづ)き、スーツのズボンのファスナーに手をかけた。
「や、やめなさいっ!・・・」
「大きな声出さない方が良いよ・・・こんな所、人に見られたら困るでしょ?」
確かにそうだ。
制服姿の女の子を跪かせている所など目撃されたら再起不能になる。
(そうだ、逃げよう・・・っ・・・)
そう思っていると、沙月はそれを見通したように言う。
「逃げてもダメだからね・・・おじさん・・・おじさんが逃げても私悲鳴あげるもん」
そうだ。
逃げても意味がない。
彼女がここで悲鳴をあげたら、その時に僕がココにいようがいまいが、彼女は僕に乱暴されたと言うに決まっているのだから。
こうまでして僕にフェラチオしようとする彼女・・・理由は一つ、自分の身の安全だ。
男性に性行為をしておいて、自分の身を守ると言うのもおかしな話だが、そうに違いない。
ここで本当に彼女にフェラチオをされると、僕には「実際にお向かいの女子高生にフェラチオさせた」と言う事実が残る。
今度は冤罪ではなく、本当の犯罪だ。
そうさせる事で、彼女は自分のしている事が親や学校に漏れないようにしているのだ。
(手慣れているな・・・)
おそらく同じ手を使って、彼女は何度もお金を稼いでいるのだろう。
こうなってはもう、僕は彼女にお金を払ってフェラチオしてもらうしかないのだから頭が良い・・・。
僕は腹を決めて、目を閉じて空を見上げた・・・。
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