一瞬、プツンと音をたてて途切れた映像は、すぐに似たような光景で再開された。
カメラから離れて行く坂井君の後ろ姿がチラリと映る。
「ちょっ、なに?どうしたんですか?」
カメラから離れるや否や、すぐに綾乃に圧し掛かる坂井君。
スエット姿のままで、ベッドに寝転んでいた妻は、驚いて声をあげる。
「奥さん・・・もう1回・・・」
短くそう告げる坂井君。
「え?さっきしたばっかりじゃないですか・・・」
既に遠慮なく、スエットの上から胸を揉み始めた坂井君に向かってそう言う妻。
「いや、俺、大事な事忘れてたっす」
「大事な事?」
「孝介さんとの約束・・・一個忘れてたっす」
そんな会話の間も、イヤらしく妻の胸を揉み続ける坂井君。
「約束って・・・」
「まぁ、それは後で教えるんで・・・もう1回・・・お願いします」
そう言いながら、彼の右手は妻のスエットの中へ潜りこむ。
「あっ・・・ちょっ」
ややしばらく、スエットの中でゴソゴソと動き回る彼の手。
「やっ・・・あっ」
しかし、その手は、すぐに妻のスエットを捲り上げ、乳房を露わにした。
(やっぱりノーブラだったか)
窮屈だからと、就寝時はいつもノーブラの妻。坂井君の家に泊まる時はどうかなと思ったが、ポリシーは曲げない派らしい。
「はぁ・・・はぁ・・・あっ」
しかし、そのポリシーが裏目に出て、あっさりと乳房を露わにされて、モニターには胸の谷間に顔を埋めるようにして愛撫に耽る坂井君が映る。
「奥さん・・・」
そう言いながら、スエットのズボンも脱がしにかかる坂井君。
「ちょっ・・・待っ」
何か言いかける妻。
それに構わずに力任せにズボンを脱がせようとする彼。
「待っ・・・てっ」
「奥さん・・・」
「待って・・・・ってば」
「ダメっすか?」
「約束って何?」
「え?」
「だから、孝介とした約束って・・・何かな・・って」
「あぁ、それなら後で教えますよ」
「今・・・」
「え?」
「今・・・先に教えてください」
「えぇ・・・後じゃダメっすか?」
「ダメです」
「どうしても?」
「どうしてもです」
「教えたら、もう1回しても良いですか?」
「それは・・・まず孝介との約束を聞いてから・・・考えます」
「教えなかったら?」
「このまま寝るもん」
なかなか生々しい会話が繰り広げられる。
僕は、僕が坂井君に出した条件なのだから、当然、彼が何をしようとしているか理解していた。
「解りましたよ~、言いますよ~」
僕が彼とした約束のうち「顔射」は達成された。
残っているのは「ベッド以外で行為をして欲しい」と言う条件と「行為の最中に僕に電話して欲しい」という条件の二つだ。
隠しても仕方がないので言ってしまうが、これから2人は今夜2度目となるセックスをする。
初めてから、どのくらい経って電話してきたのかは解らないが、とにかく僕は、僕以外の男とセックスしている真っ最中の綾乃と電話で話したのだ。
「電話するんす」
「電話?」
「そうっす」
「どこに・・・?」
「孝介さんに・・・」
「電話するのが約束なんですか?」
「そうっす」
「あの・・・じゃあ、電話・・・してください。もう遅いし・・・孝介、寝ちゃったら電話しても起きないですよ?」
予想通り、鈍い妻にはすぐに事態が飲み込めない。
「いや、そうじゃないんす、何にも聞いてないですか?」
「聞いてないけど・・・」
「最中に電話してほしいそうっす」
「最・・・中?」
「はい、エッチの最中に電話するように言われてるんす」
「そ・・・んなの・・・無理」
ようやく伝わった。
それから、予想通りに拒否反応を示す妻。
顔射のことは、ある程度話してあったから覚悟もあっただろうが、電話のことは全然伝えていないから、相当驚いたに違いない。
「でも、そう言う約束だから・・・電話しないと孝介さんに怒られちゃうかもしんないし・・・」
坂井君にしてみれば、彼は普通の性癖の持ち主のようだから、行為の最中に電話することに何の意味があるのか、今一つ理解できないのだろうと思う。
それが、言葉の端々に現れていて歯切れが悪い。
「電話して・・・どうするの?」
「解らないっす・・・」
「他に孝介から何も言われてないんですか?」
「ただ、最中に電話しろって・・・それだけっす」
「・・・・・」
「いいっすか?」
無言になってしまった妻。
手を出しにくい雰囲気を感じたのか、さっきまではガツガツ妻の身体を貪っていたクセに、今更、続けてよいかと確認する坂井君。
「最中って・・・いつ?」
「それは何も言ってなかったっすけど・・・やっぱアレじゃないっすか・・・」
「・・・・・」
「入れた後じゃないっすかね、俺、勝手にそう思ってたんすけど」
(そう言えば、最中としか伝えてなかったな)
モニター越しに疑問をぶつけあう2人を見てそう思う。最中に電話してきてくれと伝えたものの、セックスがどの段階に入ったら・・・と詳細に指示した訳ではないのだ。
「そんな・・・」
「違いますかね?最中って言ったら、そうかなって思ったんすけど・・・」
「で、でも・・・でも・・・今だってそうじゃないかな・・・わ、私の胸とか・・・触ってるし・・・コレも最中じゃないかな」
どうやら、挿入後の電話は避けたいらしい妻。
必死で坂井君を説得しようと試みる。
「じゃ、最初っから、最後まで電話繋ぎっぱなしっすか?」
「え・・・それは・・・やだ・・・」
そうなのだ。
早い段階で電話してきたって、それだけ長い時間電話を繋ぐ事になると言うだけで、妻の恥ずかしい喘ぎ声を聞き終えるまで・・・ありていに言えば、行為が終わるまで電話を切る気はない。
「そうっすよね、さすがにそれは無いかなぁと思って、だから、入れたあたりで電話すれば良いかなぁと思ったっす」
「・・・・・」
「それでいいっすか?」
「・・・解り・・・ました」
坂井君の説得を受けて、妻は渋々了解した。
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