綾乃は、坂井君に抱かれて、簡単に果ててしまった。
彼女の果て方はとても解りやすいから、坂井君にもその事は理解できただろうと思う。しかし、まだ射精していない彼は、容赦なくイッたばかりの彼女の身体を再び蹂躪し始める。
――ギシッ・・・
大きくベッドが軋んだ。
坂井君が、綾乃の身体から離れたのだ。
そうしてそのまま、グッタリと力が抜けている綾乃の身体を裏返そうとする彼。動きは鈍いけれど、彼のその仕草で、次に何をされるのか察した綾乃は、大人しく裏返り、そして腰を持ち上げた。
(綾乃っ・・・綾乃っ・・・)
モニターには、坂井君に尻を向けて四つ這いになる妻の姿。
――ギシっ
ベッドを軋ませながら移動して、四つ這いになった妻の尻に自分のモノをあてがう坂井君。
(綾乃・・・・)
それを真横から撮影した映像を見て、自分のモノを握りしめる僕。
もう正気の沙汰じゃない。
――グチュっ・・・
と、一際イヤらしい音が聞こえた。
「あっ・・・あぁぁっ」
同時に再び妻の激しい喘ぎ声が聞こえ始める。
――パンっ、パンッ・・・パンッ
腰を思い切り大きく引いたかと思うと、一気に妻の尻に打ち付ける坂井君。それを延々と繰り返す。
「あっ・・・あっあっあっ」
最初、両手を突っ張って、上体を起こしていた妻は、彼の激しい動きを受けて、あっと言う間に上半身が崩れ落ちる。
ベッドにムニュリと押し付けられて変形する妻の乳房。
――パンッ、パンッ、パンッ・・・
尻だけを持ち上げた状態で、そこへ腰を打ち付け続ける坂井君。
時折、天井を仰ぎ見るような仕草を見せるのは、快感の為だろうか。
(綾乃・・・感じてるのか?綾乃)
解りきった事を脳内で言う。
あれだけ喘いでいるのに、感じていない訳がないではないか。
上半身がグッタリとベッドに落ちていて、尻だけが持ち上がったその姿勢は「犯している」と言う言葉がピッタリで、それがまた僕を一際興奮させる。
「あっ・・・あっあっ」
顔をカメラ側と反対に背けているから、妻がどんな表情なのか解らない。それでも、ハッキリとカメラには彼女の嬉声が記録されている。
――ギィッ・・・ギィッ・・・
坂井君の腰の動きが、ゆっくりとした動きに変わった。射精してしまわないために緩急を付けてコントロールしているのだろうが、綾乃にとっては、ちょっとした焦らし効果もありそうだ。
「あぁ・・・あぁ・・・はぁはぁはぁ・・・」
全力疾走でもした後のように、大きく呼吸する妻の姿が画面越しに確認できる。
もう、どうひいき目に見ても、僕とのセックスと同等の快感を受けているのは明らかだ。妻は日頃から、セックスには気持ちも大切だと言う。好きな人に抱かれるから気持ち良いのであって、そうじゃない人に抱かれても気持ち良くなんかないと言う。
(それは嘘だ)
モニターを見ながら、そう確信する僕。
だって、こんなにも・・・好きじゃないはずの坂井君を相手にして感じているではないか。
今、彼に抱かれる妻が、僕を相手にした時と同程度に感じていると見えるのは、その「気持ち」の部分で僕にアドバンテージがあるからだろうとも思う。
(純粋に、身体だけで言えば、俺とするよりも坂井君とする方が気持ち良いってコトなんじゃないのか!?)
つまり、そう言う事なんじゃないかと思った瞬間、またも激しい嫉妬心に駆り立てられる。
――パンッパンッパンッ・・・
僕は脳内世界で、そんな風に悶々としていたけど、モニターの中では再び彼が容赦なく妻の尻を打ち付け始めた。
バックから他人に犯される妻を見るのは、これが初めてではなかった。同じように野本さんに犯される姿を何度か目にしている。
勿論、それはそれで興奮したものだが、今、目の前のモニターに映るそれは、今までとは少し違った。
何というか、セックスに「優しさ」を感じない。勿論、坂井君は素直で気の良い奴だから、綾乃を傷つけようと言う気持ちはないだろうと思う。しかし、彼は若い。
興奮が先に立って、やや自分勝手にも映るその行為。綾乃を感じさせようと言う気持ちは、優先順位的には最上位ではなく、まずは自分の快感・・・そんな風にも見える。
それは、野本さんにはなかったものだった。
彼はいつでも綾乃の事を一番に気遣ってくれたし、彼女が感じてくれれば良いなぁと思っているのが伝わってきたものだ。
僕は綾乃に乱暴されるのを見たい訳じゃない。
けれど、目の前で性の道具のように扱われる妻の姿を見て、ひどく興奮しているのも事実だ。
(ま、許容範囲かな・・・)
それに、ただ、快感に負けて相手の事を気遣う余裕がないだけで、特別乱暴な事をする訳でもない彼は、まぁ、及第点だと思うし、回数を重ねて行けば、そんな余裕も身に着くだろう。
第一、 もう僕には彼しかいないのだ。
――ギィッ・・ギィ
画面の中では、坂井君が思い切り綾乃に腰を打ち付けた後で、再び彼女から離れる様子が映った。
それから、軽く妻の尻を押して、自分の意思を伝える。
無言のままで、彼の意思を感じ取って、再び仰向けに寝転がる妻。
寝転んだ妻の両脚をすぐさま持って左右に開き、何かに急かされでもしているように慌てて自分のモノをその中央にあてがう彼。
大人しく彼が入ってくるのを待つ妻。
まるで、当然のようにそれらすべてが無言でなされている事に興奮する。
「あっ・・・あぁぁぁっ」
一気に腰を突き出した坂井君の動きに呼応するように、大きく喘ぎだす妻。
背中をグイっと反らすような仕草で彼を迎え入れる姿は堪らない。
――ギッ、ギッ、ギッギッ・・・
今度も、入れるや否や激しく腰を動かす彼。
「あっあっあっ・・・あっあっ」
容赦のない攻撃に、堪らず激しい声を漏らす妻。
坂井君が、両手で妻の左右の膝を持ったまま、機会仕掛けのように腰を前後に動かしているのが滑稽に映る。
「あっあっあっあっ・・・あっ」
その滑稽な姿の彼に、どれだけの快感を与えられているのか、彼女の声はあきらかに最後の時に向かって邁進し続ける。
これまでなら、この辺で動きをスローにして、射精を防いでいた坂井君だが、今度は違った。
「奥さん、も・・・・出しても・・・いいっすか?」
腰の動きはそのままに、彼が綾乃に射精の許可を求める。
「もう・・・ヤバいっす・・・出しますよ・・・」
「・・・あっ・・・あっあっ・・あっ・・は・・はい・・・はい・・・っ」
喘ぎ声を上げながら、切れ切れに、ようやく「はい」と2度返事する妻。
「あぁ・・・」
「あっ・・・あっあっ」
呻くような「あ」を発する坂井君と、叫ぶような「あ」を発する綾乃。
対照的な2人の姿がモニターに映り続ける。
「んっ・・うぅ・・ぅ」
「あっ・・あっぁぁっ」
小さな呻き声と共に、坂井君が大きく2度、3度と腰を綾乃に打ち付け、そして動きを止めた。綾乃は、その動きに合わせて同じように2度、3度と喘ぐ。
やがて、綾乃の中ですべてを出し切った彼はゆっくりと彼女から身体を離す。
それからベッドの端に腰掛けると、装着していたコンドームを外す。
そのコンドームに溜まっている、大量の白濁液が、彼の大きな満足感を物語っている。
(でも、最後は2人同時にはイケなかったみたいだな)
結局、綾乃は、最初の方に一度果てただけで、最後は坂井君と同時に果てる事は出来なかったようだった。
僕らが夫婦で行為に及ぶ時には、殆ど毎回、最後は2人で呼吸を合わせて同時に果てる。ビクビクと痙攣する綾乃の姿を見ながら、その身体へ精液を浴びせるのだ。
(まだまだだなぁ、坂井君)
僕はそんな風に思ったりもしてみたけれど、本当はもう気が付いていた。
純粋にセックスと言う行為そのものだけを見れば、僕は坂井君には敵わないだろう。おそらく、彼とする方が大きな快感を得られるに違いない。
僕が勝てるのは、綾乃に愛されていると言うその一点、ただそれだけ・・・。
腹立たしいとか、悔しいとか・・・そんな気持ちは微塵もなかった。ただ、この状況を次はどうやって楽しもうか・・・それだけが、今の僕の興味だった。
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