(なんだよ、後少しでイクところだったのに)
妻の股間から顔を上げた坂井君を見て、そう思う僕。
「も、入れたいっす」
そんな僕の気持ちは、勿論、彼に伝わる訳もなく、挿入欲を綾乃に伝えながら、そのための姿勢に移行する彼。
「あ、まっ・・・避妊・・・は?」
彼の愛撫を受けてクタリとなっていた綾乃は、その気配を察知して、慌ててそう言った。
(あ、忘れてた!)
僕は、モニター越しに妻がそう言うまで、すっかり避妊の事を忘れていた。
前にも言ったかもしれないが、ウチの妻はちょっと妊娠し難い体質ではある。しかし、だからといって絶対にしない訳じゃないし、今日・・・と言うか、この行為が行われた日が安全なのかどうかも僕には解らない。
(すっかり忘れてたよ~、どうしたんだろ)
「あ、俺、コンドームとか持ってないっす」
「それは・・・ダメだよぉ」
「マジっすか・・・ここでお預けはキツいっす」
「だって・・・赤ちゃん出来たら・・・困るもん・・・」
「絶対、外に出しますから・・・ダメっすか」
「ダメ・・・それは絶対に・・・ダメ・・・」
「でも・・・でも・・・そうっすか・・・そうですよね・・・」
明らかにシュンと落ち込む彼。画面越しに見ても気の毒になるくらいだ。ましてや全裸でヘコんでいるものだから、その「可哀想度」はハンパじゃない。
「・・・・・また、今度・・・今度があったらですけど・・・今度はちゃんと買ってきます・・・・」
肩を落として、そう言いながら自分のパンツに手を延ばす坂井君。
傍らに丸まっていた毛布を引っ張ってきて、その彼から裸体を隠す妻。
「・・・・・そこ・・・」
「はい?」
そんな坂井君の姿を見て、さすがに「ホントに最後までヤッたんだろうな」と心配になりかけていた時、綾乃が寝転んだままで寝室の棚を指差した。
(ゴクリっ)
僕はこれから妻がとろうとしている行動に、一つの可能性を見出して固唾を飲む。
「そこ・・・の・・・下から2番目の引き出し・・・」
「・・・・・」
「あるから・・・」
――ギッ・・ガタンっ
モニター越しに、坂井君がベッドから降りた姿が映る。そのままフレームアウトすると、引き出しを開けたと思しき音・・・。
「あ、あった、ありました」
それから、嬉しそうに再びカメラの中・・・もとい、ベッドの上に戻って来る彼。右手には小さな包み・・・。
そうなのだ、そこは夫婦の寝室。
前に言ったかどうか忘れたけど、僕と綾乃が夫婦でセックスする時にコンドームを使う事は少ない。
だけど、寝室にはコンドームが常備してあった。
なぜなら、少し前まで、その寝室では野本さんが綾乃とセックスをしていたからだ。つまり、今、坂井君が手にしているのは、野本さんのために常備していたコンドームだ。
でも、野本さんの希望もあって、坂井君には野本さんと綾乃がそう言う関係だと言う事は内緒にしているから、おそらく「夫婦のコンドーム」だと理解しただろう。
(そんな事より・・・)
僕は、自制できないレベルの興奮に襲われていた。
妻が自ら、コンドームの位置を坂井君に教えた事がその理由だった。
(綾乃・・・入れて欲しいんだ・・・坂井君に・・・)
そうとしか考えられない。
坂井君が我が家のコンドームの位置を知っている訳ないし、さっきの雰囲気であれば、コンドームがないから諦めようと言えば、おそらくそれで終わっただろうと思う。
もしも、若い坂井君が「収まりがつかない」とでも言うのであれば、もう一度、口で抜いてやれば良い。
つまり、綾乃がセックスを・・・彼に挿入される事を回避する手段はいくらでもあった。
(にも、関わらず、自らコンドームの場所を教えるって言う事は・・・)
つまり、綾乃も入れて欲しい・・・それが大袈裟だとしても、少なくとも「入れられても良い」とは思っているはずなのだ。
(ああああ、綾乃ぉ)
倒錯した嫉妬心と興奮。
モニターには、壁側を向いて無言のままで寝転んでいる裸身の妻。とは言っても、その大半は毛布で隠れてしまっている。
その脇には、さっそくコンドームの封を切って、自分のモノに装着する坂井君の姿・・・。
そうして、それが終わると、黙って妻の身体を隠していた毛布を剥ぎ取る。
坂井君が綾乃の膝を持った。
――グッ
っと一瞬力を入れたようには見えるが、それでも比較的すんなりと左右に開く綾乃の両脚。
彼の眼前に晒される、おそらく愛液と唾液でヌルヌルになっているであろう、妻の女性器。
恥ずかしさに耐えるように、彼から顔を背けたままの妻。
自分のモノを持って、先端を秘壺にあてがう坂井君。
そして・・・。
――ヌチっ・・・ヌチュっチュっ・・・
「あっ・・・あぁっ」
グイッと身体を延ばすような仕草を見せる妻。
――ヌッチュ、ヌッチュ、ヌッチュ・・・
入れるや否や、すぐに腰を大きく動かして、妻の中へ自分のモノを出し入れする彼。
「あっ、あっ、あっ・・・あっぁ」
彼に突かれる度に、胸をユサユサと揺らしながら喘ぐ妻。
今回は、以前、野本さんと綾乃にセックスをさせた時のように、彼女を欲求不満状態にした訳ではなく、性生活も含め、普通の生活を送っていた。
にも関わらず、いつもの僕とのセックスよりも乱れているように見えるのは気のせいだろうか。
「あっ・・・あっ・・・あぁっ」
早くも妻がシーツを掴みだした。
さっき、イク直前で愛撫を止められているから、もうすぐにも果てそうなのかもしれない。
と、坂井君の腰の動きが、一転してゆっくりとしたものに変わる。
さすがにあの勢いのままでは、あっと言う間に射精してしまうだろう。それを回避するために緩急をつける彼。
「あぁっ・・・あぁぁ・・・」
彼の動きが遅くなったのを受けて、妻の小気味よい喘ぎ声が糸を引いたような声に変わる。これはこれで艶めかしいと言うか・・・とにかく、いやらしい。
――ギッ・・・ギシィっ・・・
彼の動きに合わせて軋むベッド。
(このベッドももう古いからなぁ、買い替え時かもな)
結婚した時に購入した、古いダブルベッド。
僕らはこの上で幾度となくセックスをした。僕の性癖が変になってからは、綾乃は野本さんともこのベッドの上で行為に及んでいる。
そしてモニターの中では、坂井君に犯される妻の姿。
新婚の時に買ったベッド。購入した時には、まさかこの上で僕以外に2人もの男に抱かれる事になろうとは綾乃も思っていなかったに違いない。
勿論、僕だって購入した時には、大切な妻をこの上で他の男に抱かせるなんて事は微塵も思っていなかった。
――ギッ、ギッ、ギッ・・・
ベッドの軋む音が、再び激しくなってきた。
「あっ、あっ、あっ・・・・」
また、小気味良い喘ぎ声に変わる妻。両手はギュッとシーツを掴み、時折見える表情は何かに堪えているようにも見える。
――ギッ、ギッ、ギッ・・・
坂井君の腰の動きは激しいままで、さっきから一定のリズムを保っている。
「あっ・・・あっあっあっ」
それなのに、綾乃の喘ぎ声だけが、ボルテージを上げていく。
――ギシッ、ギッ、ギッ、ギシッ・・・
「あっ・・・あっあっあっ・・あぁ・・・ああぁっ・・・っ・・んっ」
その時、何の前触れもなく、妻が一際激しい喘ぎ声を上げた。と、同時に、腰をグッと持ち上げるような仕草をして、ブルっと震える。
彼女のその動きの影響を受けて、一時腰の動きを止める坂井君。
そのまま、はぁはぁと肩で呼吸をしながら、グタリとする綾乃。
(イッた・・・な)
相変わらず、解りやすい果て方だ。
おそらく坂井君も、自分のモノで綾乃をいかせた事を理解しているだろう。
(綾乃・・・綾乃・・・・)
モニター越しとは言え、眼前で若い男にいかされる妻の姿・・・僕はそれを見ながら、とっくに屹立していた自分の愚息を、いつの間にか握りしめていた。
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