先日、2階から覗いた光景は僕を激しく興奮させた。あのシルエットだけの光景の記憶が薄れる前に、僕は野本さんが撮影してくれたビデオを見た。
あの時の光景を思い出しながら見る、妻の細かな口元や舌の動きは格別だったけれど、やっぱり僕は3Pがしたいと言う思いを捨てきれずにいた。
「でもなぁ、また怒らせたら元も子もないしなぁ」
僕は野本さんに言った。
「そうだよなぁ、だってよ、普通、口でだってしてくれないぜ?」
「まぁ、そうですよね・・・」
前にも言ったかもしれないが、僕と野本さんはバイクで繋がった趣味の友達だ。
今日は久しぶりに彼と2台でツーリング中だった。バイクで走るには少し寒いけれど、景色はキレイで、とてもじゃないが普通の人はこの景色の中で「3P」の話なんかする気になれないだろうけれど、生憎と僕は「普通の人」ではない。
「でも、野本さんばっか気持ち良さそうなの見てるのも我慢の限界なんすよね」
「だけど、後でおまえだって、きちんとヤッてるんだろ?」
僕は野本さんを巻き込んで、こう言う行為をするようになってから、普通に妻を抱く事も勿論あったが、その前に必ずやっている事があった。
それは、妻が野本さんにしてやったフェラチオを、彼が撮影した映像を元にトレースする事だった。
「野本さんにはどういう風にしたの?」
「ビデオではもっとイヤらしく舌を使っているように見えたけど?」
綾乃は嫌そうだったけれど、そんな言葉を彼女に投げかけながら受けるフェラチオは、僕にとって至福の時だったのだ。
「まぁ、やるにはヤッてますけど・・・」
ただ、さすがにそこまでは野本さんにもカミングアウトしてなかったから、僕は何となく濁してそう返答した。
「だったら、それで良いんじゃないの?」
「いや、でも、野本さんだって3P・・興味ありません?」
「そりゃあ、ヤッてみたいとは思うけどさ」
「でしょ?」
「けど、また怒っちゃうぞ?奥さん」
そうなのだ、以前、彼女に3Pの話を持ちかけた時には、烈火のごとく怒った。とかく「怒る」と言う感情をあまり見せない彼女があんなに怒るのを見たのは、付き合っている時も含めて初めての事だったと思う。
簡単に言うと「他人に口でするだけでも変態みたいなのに、3Pなんて完全に変態のやることだ」と言うのが彼女の主張で、僕はそれに反論する術を何一つ持っていなかった。
「ですよね・・・」
「そうだよ、だいたい、おまえの性癖に合わせて、俺に口でするってだけでも偉いと思うよ、奥さん。普通はいくら旦那の望みでもやらないと思うけどな」
「それは・・解ってますけど」
「去年なんか、俺にHまでさせてくれてるんだぜ?そこまでやってくれてんだから、これ以上贅沢言ったらマズいだろ」
「そう・・ですよね」
野本さんの言う事は100%正しい。綾乃も変態性癖の僕と結婚してしまったのだから仕方がないと割り切ったのか、出来る所まで譲ってくれている。元々恥ずかしがり屋なのに、あそこまでしてくれているのは、彼女なりに相当頑張ってくれていると思うのだ。
それは解っている。
(けど、理性とは別なんだよな・・・)
僕は口に出さずに思った。理性的な部分では野本さんの言う事は全く当然だし理解も出来る。だけど、下半身と理性は全く別物なのだから、そう簡単に納得のいくものでもない。
「なんとかなんないかなぁ」
僕はポツリと口に出して言ってしまった。
「無理だって」
野本さんが冷たく言い放つ。
「せめて野本さんにフェラしてるところを直接見たいんですけどね・・・」
「それも無理だろ、相当拒否ってるじゃん、いつも」
「ですよね~」
「逆ならいけるかもしんないけどさ」
「逆?」
「そう、おまえが奥さんにフェラされてるのを俺が見てるの」
「・・・・・」
なるほど、全く考えもしなかった。いきなり「野本さんにフェラしている姿を見せろ」と言うから拒否されるのかもしれない。
順を追ってと言う意味では、僕が妻にフェラチオされる姿を野本さんが見る・・・と言うのを経験する事で「とにかく3人で卑猥なことをする」ということに慣れさせるのは手かもしれない。
「それ、ナイスアイデアじゃないっすか?」
「は?」
「やりましょうよ、今度、それ」
「それって、俺が見てるってやつ?」
「そうですよ、たまには見るだけで我慢してくださいよ」
「いや、それはいいけどさ・・・」
「じゃ、きまりですね、俺、明日にでも綾乃をその方向で説得しますから」
(ああ、お義母さんには悪いけれど、近いうちにまた孝太を預かってもらわなきゃ)
僕はそんな事を思いながら、帰途につくために再びバイクに跨った。
※※※
ビデオは撮らない、絶対に2人がかりで綾乃に迫ったりしない、口でするだけでそれ以上の事は求めない・・・。
嫌がる妻から了解を得るためにした約束だった。
最初「野本さんの見ている前で俺にフェラしてくれ」といった時に、妻は「気は確か?」とでも言いたげな表情を見せた。しかし、実際に行為に及ぶ相手が野本さんではなく僕である分、初めて「野本さんに奉仕してくれ」とお願いした時よりは説得に時間を要しなかったと思う。
とは言え「他人に見られながら夫に口で奉仕する」と言うのも十分変態行為ではあるから、説得には1時間近くかかり、なんとかOKと言わせるためにした約束が冒頭のものだった訳だ。
この約束を見る限り、妻はなし崩し的に僕と野本さんに2人がかりで犯されるのではないかと心配しているようだ。だけど、そんな事はしない。そんなレイプまがいの事をしても僕はちっとも興奮しない。
言葉では嫌がっているのに身体は・・・そういう状況が僕の希望であって、そんなレイプみたいな形で3Pを実現しても妻の淫乱な部分は引きだせないと思うからだ。
とにかく今回は「3人居る空間でイヤらしい事をした」と言う事実があれば良い。
「3人一緒ににイヤらしい事をした」はまだまだ先のステップなのだ。
そんな事を考えているうちに、決行の日はあっと言う間にやってきた。
※※※
子供はいつものようにお義母さんに預けてきた。
「あら、最近はよく遊びにくるのね~孝ちゃん」
妻の実家へ孝太を預けに行った時、お義母さんがそう言ったから「少し頻繁に預け過ぎかな?」とも思ったけど、お義父さんとお義母さんの孝太への溺愛ぶりを見ていると、どうもそれは杞憂のようだ。
こうして僕は何の憂いも無く、今日も可愛い我が子を妻の実家へ預けて変態行為に及ぶのだ。
「そろそろ、してもらっていい?」
僕は、まだ満足するほど酒を呑んでいなかったけれど、妻にそう切り出した。
きっと僕より酒の強い妻や野本さんは、もっと満足していなかったと思うけど、これから繰り広げられる初めての体験に僕は胸躍っていて待ちきれなかった。
「・・・・・」
妻はいつものように、そうした空気に突入したと気取ると、急に無口になった。
「俺は・・・どうしたら良いの?」
野本さんがいつもと勝手が違う・・といった様子で僕に訊ねる。
「ただ、その辺で見ててくれれば良いんですよ」
「そう?ビデオは?今日は撮影しなくて良いの?」
「綾乃が、今日は撮影しなくて良いでしょ・・・って」
「どうしてかな?」
「それは・・・」
「だって、意味ないじゃないですか」
少し離れた台所で洗い物をしながら綾乃が口を挟んだ。
彼女が、僕と野本さんが卑猥な相談をしているところに口を挟んでくるのは珍しい。いつもは聞き耳をたてているだろうに、聞こえないふりをしているのに。
「意味ない?」
「そうですよ」
「どして?」
「だって、アレは孝介に見せるために撮影してるんですよ?」
「・・・うん」
「今日は孝介が・・・その・・・孝介に・・・私がするんだったら、いらないじゃないですか」
正論である。
僕は実際のところ、一度だけ見たら映像は削除すると言う妻との約束を守ってはいない。これまで野本さんが撮影してくれた妻の卑猥な映像は一つ残らずメディアにバックアップして保管してある。
しかし、妻はあくまで「僕が1度だけそれを見て興奮したら消去している」と信じている。
つまり、コレクション的な意味合いは妻には少しもなく、ただその場にいない僕の眼の代わり・・・そう理解しているのだ。
その眼が、今日はあるのだからカメラは必要ない。
至極当然の妻の言葉だったから、僕は今日の撮影は諦めていたし、カメラの準備もしていなかった。だいたい、野本さんに・・・他人にフェラチオする妻の姿を撮影するから興奮するのであって、僕にフェラチオする綾乃の姿を撮影しても面白くもなんともないから、それについてはそうガッカリしてはいなかった。
いや、むしろ、この事が後々、僕に予想以上の興奮を与えてくれる要因にすらなるのだが、この時の僕はそんな事には全く気が付いていなかった。
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