「じゃ、とりあえず海の方へ向かって走るよ」
僕はそう言って車をスタートさせた。
今日は美紅と初めてのドライブへ行く事にしていた。
とは言っても、学生の身分で車など所有しているはずもなく、今乗っているこの車はレンタカーだ。
1300CCの小型車だったが、それでも丸一日借りるとなると、バイトと仕送りで生活している僕にとっては大きな出費だった。
「ドライブ行ってみたい…」
そう言いだしたのは美紅だった。
僕はペーパードライバーだったけど、美紅の望みを何とか叶えたくて、今日こうして車で彼女の部屋まで来たのだ。
「さて、どこ行く?」
雨は降っていなかったが、生憎の曇り空でドライブ日和とはいかなかった。
だから僕は尚更元気よくそう訊ねた。
「う~んとね…」
美紅はドライブへ行きたいと言ったが、行先はどこでも良い感じだった。
僕と2人で車でどこかへ行くと言う事だけで楽しいと言うのだ。
僕はてっきり美紅が行きたい場所があるのだろうと思っていたが、彼女がそう言うので、とりあえずドライブの定番、海へ向かって走ると決めたのだった。
「なんか不思議な気持ちだね~」
「なにが?」
「うふふ…木下君が車運転してるのが…」
「でも、ちゃんと免許は持ってるから…大丈夫だよ」
「うん、心配してないよ…」
そう言う美紅は運転免許も持っていなかった。
「でも、この時期だし、海に行ってもなにもないかもな」
僕は言った。
もう季節は「秋」だと言いきってしまえる程に冷たい風を感じる。
そもそも、僕が慌ててレンタカーを借りてきたのも、雪が降ってからの運転では自信がないから、その前に…と言う事情もあった。
「いいんだよ…何もなくたって…」
「そう?」
「うん…いいの…ドライブするだけで」
僕はこの時、美紅が僕と居られるだけで楽しい…そう言ってくれたのだと理解して、1人温かい気持ちを胸に抱えていた。
勿論、美紅にしてもそう言う意味合いも込めてのセリフだったと思う。
しかし、彼女は僕と「ドライブをする」事だけが目的ではなかったのだ。
海まで片道1時間半、途中で食事したり休憩したり…海で遊び終わってから峠道を美紅の部屋へ向かって帰路についた頃には、辺りはすっかり薄暗くなっていた。
「事故…しないでね」
「うん。安全運転するから…車は今日の閉店までに返せば一日分の料金で良いし…急がなくても大丈夫だよ」
僕が美紅に向かってそう言った後で、彼女はしばらく黙り込んでしまった。
車内にはFMラジオから流れる軽快な音楽とDJの声…。
と、ラジオがコマーシャルになったタイミングで美紅は口を開いた。
「ねぇ…車の中でエッチって出来るかな…」
「えっ?」
僕はハンドルを握って、真っ直ぐ前を向いたままで驚いた。
「あのね…車の中でエッチする人…居るんだって…」
(またネットで見たんだな…)
僕はそう思った。
「ああ…聞くね…そう言う話…カーセックスって言うんだよ」
たまには僕だって性的な知識がある所を見せたい。
僕は努めて冷静にそう言った。
「した事ある?…木下君も」
「あるわけないじゃん!去年免許とったばっかりだよ?…俺…」
「そっか…そうだよね…」
美紅はそれっきり何も言わなくなった。
車内には再び軽快な音楽とDJのしゃべり…。
やがて僕は沈黙に耐えられなくなって美紅に言った。
「してみたいの?…車で…」
「ん?」
「エッチ…車で…興味あるのかなと思って…」
「興味って言うか…こんな事そうそうないでしょ!?…だから…」
美紅は別にカーセックスがしたい訳じゃないけれど、2人で車に乗って出かけるような機会はそうそう無いだろうから、この機会に経験してみても良いかなと思った…そんなニュアンスで僕に答えた。
※※※
「ここなら…人、来ないんじゃないかな…」
僕はメインの峠道から一本入った所にある、そこそこ広めのパーキングに車を停めた。
「そうだね…何か真っ暗で…オバケとか出そう…」
「い、嫌なこと言うなって…」
美紅のオバケ発言に反応する僕は、実は今でもそう言う類の話は苦手だった。
しかし、美紅の言うのも一理あった。
本当に人っ子一人通らない道で周囲は真っ暗…オバケでも出そうだ…。
ただ、振りかえれば、雑木林の向こう側に時折車のライトが動いて行くのが見える。
一本向こうのメインの峠道には割合頻繁に車が通っていると言う事で、僕は少し安心した。
「やっぱり、全部脱がすのはマズいよね…」
外は冷たい風が吹きすさんでいたものの、車内はヒーターで暖かい。
脱がそうと思えば、美紅を全裸にしても寒くはないだろうが、万一誰かが来たときに美紅の全裸を見せたくないし、第一、逃げようもない。
「そうだね…さすがに…下着だけにするよ…」
美紅も同じように思ったのか、着ている長いネルシャツの中に両手を突っ込んでゴソゴソとした。
プチンっ
と音がした。
ブラジャーのホックを外したのだろう。
僕はそれを見てから、ジーンズのベルトに手をかけて緩めた。
「まず…何からすれば良いんだろね…」
カーセックス初体験の僕はそう美紅に話しかけた。
別に美紅に教えてもらおうと思った訳ではない。
彼女にしてもこんな事は初めての体験なのだから。
「私が…してあげるよ…」
しかし、美紅はそう言うとサイドブレーキを間に挟んだ窮屈そうな姿勢で僕の股間に顔を伏せてきた。
ピチャっ…
暗闇の中では何も見えないが、股間に感じる感触で美紅が何をしているのか解る。
しかし、これではあんまり窮屈だ…。
そう思った僕はシートレバーに手をかけた。
バタン…
と音がして一気にシートが倒れた。
驚いた。
「んっ…勢いよく倒れたね…」
美紅は、僕のモノに舌を這わせながらそう言って少し笑った。
シートが倒れても暗くて美紅が何をしているかはハッキリ見えなかった。
それでも、暗闇の中で美紅の頭が一つの黒い影になって、僕の股間でモソモソと動き回っている様は視覚的に僕を興奮させる。
いつものように美紅が僕のモノを咥えた。
やはり窮屈なのか、大きく頭を振る事は叶わず、モソモソと咥えた頭を上下させる美紅。
少し頭を起こして、サイドミラーを見ると、雑木林の向こうに車のライトが通り過ぎた。
あの一つ一つに人間が乗っているのだと思うと、少し離れただけのこんな所で美紅にフェラチオされている事がひどく不思議だ。
耳を澄ませば、車のタイヤがアスファルトを流れて行く音も小さく聞こえる。
ジュル…ジュポっ…
耳に神経を集中していたから、美紅が口元から卑猥な音を出した時、いつも以上にその音がクリアに聞こえた。
変わった場所で行為に及んでいると言う事もあっただろうが、それを差し引いても今日の美紅のフェラチオは気持ち良い。
しかし、それをゆっくりと楽しむには、ここはあまりに落ち着きのない場所だった。
「美紅…そっちのシートも倒そうよ…」
「うん…どうやるの…?…」
僕の股間から顔を離した美紅の身体に自分の身体を被せるようにして、助手席側のシートレバーを手探りで探す僕…。
バタンっ…
「きゃ…っ!…」
またやってしまった。
美紅が後ろに勢いよく倒れる。
しかし、この姿勢は好都合だ。
僕が美紅に触りやすい。
「また勢いよく倒れちゃったね…」
そう言う美紅の唇を僕は自分の唇で塞ぎながら彼女の乳房を服の上から揉み始めた。
秋の訪れとともに美紅の服装も厚着になるのは仕方のない事だった。
特に彼女は寒がりで、普段、彼女の部屋に遊びに行っても、僕がうっすらと汗を滲ませるほど暖房で部屋を暖める。
そんなだから、服の上から触った美紅の乳房は、その柔らかさがどこか遠くにあるように、呆けた感触だったのだ。
「寒くない…?…」
「うん…大丈夫…」
僕は美紅が寒くないか確認した後で、彼女のすべての衣服を素っ飛ばして、一番下に着ているTシャツの中に手を入れた。
ブラジャーは美紅が先にホックを外してくれている。
僕の手に直接伝わる、柔らかくボリュームのある美紅の乳房の感触。
衣服の中に手を突っ込んでいる事と、ここが真っ暗闇である事も手伝って、視覚から得るものは何もない。
それ故に、手の平から伝わるその感触に一際集中できる。
(こんなに柔らかかったっけな…)
僕は今更ながら、触りなれた美紅の乳房の感触に感動する。
フカフカとしたその感触に集中していたから、乳房の頂点だけが硬くなっているのが、尚目立つ…。
クリュクリュ…
僕は触覚だけを頼りに、その硬い蕾を摘まんでから軽く|捏《こ》ねた。
ピクンっ
と身体を震わせる美紅。
いつもの反応だが、いつもとは違う環境が、その姿を尚淫靡に見せる。
僕は一しきり、彼女の乳房の頂点をクリュクリュと弄んだ後で、美紅の下腹部へ手を伸ばした。
ヌルッ…
予想はしていたが、彼女のそこはすでに濡れていた。
ショーツを履いたままだから、このままにしておけば下着までビショ濡れになってしまうかもしれない。
しかし、今日の彼女のファッションはTシャツの上にロングネルシャツ、下はややダブついたデニムのパンツ…足元にはゴツめのブーツと言う念の入れようだ。
ブーツのヒモを緩めて脱がし、デニムのパンツを下げ、下着を剥ぎ取る。
その肯定は長いし、そこまで脱がせて、もし他人でも来たら取り繕いようがない。
僕は考えた末に、美紅を裏返して四つん這いの姿勢にした。
「ど、どうするの…?…」
さすがにそう尋ねてくる美紅。
「このままだと靴もズボンも一回脚から抜かなきゃなんないからさ…」
そこまで言うと僕は、美紅のデニムのパンツに手をかけて、それを一気に彼女の膝下あたりまで下げた。
その中のショーツも同じ位置までずり下げる…。
「これなら、靴脱がなくても良いし、何かあってもすぐにズボン…上げられるだろ?」
僕は彼女を四つ這いの恥ずかしい格好にして、尻を丸出しにした理由を説明してから、助手席側に身を寄せて、彼女の秘部を舐め始めた。
「あっ…は、恥ずかしいよ…こんな…」
美紅の訴えは当然だった。
暗闇の中とは言え、狭い車の中で四つん這いになって尻を突き出し、しかもその尻は丸出し…おまけに自分の脚は膝下に溜まっているデニムのパンツとショーツで固定されて身動きがし難い…。
その状態で、後ろから…彼が自分の濡れた部分を舐めまわしているのだ。
「あっ…あぁぁ…っ…」
しかし美紅はその状況になると一段と大きく喘いだ。
この頃になると僕は、美紅の属性に気が付き始めていた…。
喘ぎ声を我慢したり、僕の全身を舐め廻したり…果ては顔に精液をぶっかけられたり…。
普通の女の子だとあまり嬉しくないような、そんな状況になればなるほど美紅は興奮した姿を僕に見せる。
…彼女は、割と強度のM体質ではないだろうか。
そう思っていた。
「こんな所でエッチしてるのに…美紅…すごい濡れてるよ…」
「いや…ん…」
「|他人《ひと》に覗かれるかもしれないのに…興奮してるの…?…」
「そんなこと…ないもん…」
そう言う美紅の秘部は言葉とは裏腹に、一本だけ入れた僕の中指をキュウッと締め付ける。
「もう…入れよっか…」
いつ人が来るかもしれない…もう僕も入れたい…美紅の淫らな姿を早く見たい…色々な要素が絡まり合って、僕はもう彼女へ挿入する事を提案した。
「うん…もう…」
美紅は「もう」と行ったっきり黙って、四つん這いで尻を突き出したまま身動ぎしなくなった。
僕が入ってくるのを待ち構えているのは一目瞭然だ。
僕は興奮もしていたが、それでも男の努めとして周囲に気を配る事も忘れていなかった。
(大丈夫そうだな…)
周囲に人影はない。
僕はいつものサイフからコンドームを取り出して自分のモノに被せ、すぐさま美紅の中へ入った。
「う…あぁぁ…んっ…」
ずっと黙ったままだった美紅の口から、堰を切ったように喘ぎ声が漏れ出した。
狭い車内と窮屈な姿勢のせいで、満足のいく腰の動きは出来なかったが、その抑制された感じが逆に興奮する。
僕は、狭い車内で別な体位も出来ないかと考えながら美紅を突いていたが、パンツとショーツを膝まで下げただけの彼女は膝をピタリと付けたままで足を開く事が出来なかったし、結局そのまま…後ろから美紅を突き続けるしかなかった。
「あっ…あっ…あっ…!」
狭い空間に居るせいで、美紅の声はいつもよりも大きく僕の耳に届く。
それに、いつもは感じない僕自身の汗の匂いと、美紅の秘部から立ち込める女の匂いも感じる。
普段はあまり意識しない、臭覚からの興奮を与えられた僕は、早くも射精感が湧き上がるのを感じて、気を紛らわせようと外へ目を向けた。
しかし、2人の熱気で窓は薄く曇り、外が良く見えない。
「あんっ…あんっ…あっ!」
そうしている間にも美紅はどんどんと喘ぎ声を大きくしていった。
やがて、僕に耐えきれない射精感が迫ってきた。
残念だが、今日も美紅が果てる姿を見る事は出来なそうだ…。
そう思った時…。
「あっ…あっん…い、イク…イク…っ」
美紅が言った。
僕はグッと下腹部に力を入れた。
何とか彼女がイクまで我慢しなければ…そう思ったのだ。
「木下っ君…イク…イク…」
「うん…いいよ…イッて…俺ももう…」
「イク…イク…イッ…ク…あはぁぁっ!…」
美紅は四つ這いで自分の上半身を支えていた両腕をピンッと突っ張らせて背筋を伸ばすような姿勢でビクっと身体を震わせた。
僕はそんな彼女の姿を見て安心して、彼女の中へ精を放った…。
※※※
身支度を整えた後で少し窓を開けて、曇った車のウィンドウがクリアになるのを待っていた時、突然明るい光が一瞬僕等を後ろから照らした。
メインの峠道を一本入ったこのパーキングに、もう一台の車が入ってきてすぐにライトを消したのだ。
その車は、僕たちの乗った車とは少し距離をとった後方に位置していた。
様子を伺っていたが誰かが乗り降りする気配はない。
「危なかったねぇ…」
美紅が言った。
「そだね…もう少しタイミングがズレてたら見られちゃったかもね」
「でもさ…こんな所に何しに来たんだろうね…うふふ…」
意味ありげに笑う美紅。
「そりゃ…俺たちと同じかもよ…案外…」
「やっぱり~!私もそう思った!」
的を射たり…と言った調子でそう言う美紅。
「でもさ…同じ事しに来たんなら、少しくらい見られても大丈夫だったね…」
そう言う美紅に、僕は賛成しないままで車のエンジンをかけて、その場を離れた。
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