早いもので、もうすぐ年が明ける。
僕と美紅は互いに地方出身者で、正月は帰省する予定になっていた。
「ねぇ、一緒に帰ろうよ~」
美紅が全裸にバスタオル一枚の姿で言った。
「一緒って…実家まで?」
「うん…方向一緒だし…」
「俺、金ないから深夜バスで帰る予定だけど…」
「それでもいいよ…一緒に帰ろうよ」
美紅の実家は、ここと僕の実家の間…やや僕の実家寄りに位置する場所にあった。
僕の乗ろうと思っている深夜バスは、確かに美紅の実家の街も経由する事になっている。
しかし、深夜バス…とは言っても、出発が深夜と言うだけで、そうそう7時間も8時間もかかる訳でもなく、あちらに着くのもやっぱり深夜だ。
まぁ、だから安いのだが…。
「そんな時間に女の子が1人で帰省するなんて、両親が許さないんじゃないの?」
僕は美紅に向かって保護者ヅラで言った。
「う~ん…じゃあ、お父さんに迎えに来てもらう」
「いや、それは尚更迷惑でしょ?…何時だと思ってんの…到着…」
「何時なの?…」
呆れたやつだ、そんな事も知らないで僕に着いてくるつもりだったのか…。
「たぶん、俺んちに着くのが5時くらいだと思うから、美紅のトコは3時半とか4時とか…そんな時間だよ…」
「えぇ…そんな時間にバスなんて走ってるんだ~…」
「そう、でも皆乗らないでしょ?こんな時間に。だから安いの…」
安いと言っても年末年始はいつもより割高だ。
可愛がられている美紅は両親から帰省費用をもらったようだが、僕は自分のバイト代で帰省しなければならない。
なんて理不尽な話だ。
「でも、なんか修学旅行みたいで楽しそう…」
「修学旅行って…」
結局、美紅は両親に友達と一緒に帰るから…と嘘をついて僕と深夜バスで帰省する事になった。
※※※
―パ~ン
誰に向けて鳴らしているのか知らないが、バスが軽快にクラクションを鳴らして走り出した。
僕と美紅は、正月の繁盛期だと言うのに、真ん中より少し後方の並びの席を取る事ができて、窓側に僕、通路側に美紅が座った。
窓側は寒そうだし、自分が先に降りるのだからと美紅が通路側の席を選んだのだ。
「ねぇ…これ、どうするの?」
「どうするって、ただのカーテンだよ…寝るときにそれで仕切るの…」
「ふ~ん…狭っ…」
深夜バスに乗るのは初めてだと言う美紅は、乗車してから30分ほどはしゃいでいたが、そのうち騒ぎ疲れたのか大人しくなった。
「美紅…カーテン締めて…到着するまで寝たら?…」
「でも、降り損ねるから…起きてる…」
「大丈夫だって、どこで何人降りるのか運転手さんも知ってるんだから…アナウンスもあるし」
「そうなの?…じゃ、寝る…」
美紅は、某タヌキみたいな青い猫型ロボットが主人公のアニメに出てくる、メガネの少年と良い勝負が出来るくらい寝つきが良い。
この日も通路側のカーテンだけを引いて、僕と美紅…2人だけの簡易個室状態にすると、あっと言うまに眠りについたようだった。
対して僕は、今でもそうなのだが寝つきが悪い…。
普通にベッドで寝ようとしてもそうなのだから、こんな狭い座席で眠る事は至難の業で、眠れない事を想定して文庫本や音楽プレーヤーを持参していた。
しかし、美紅は僕の方に身体を寄せるようにして眠ってしまっている。
今、各座席についている小さなライトを点けたら、いくら小さいとはいえ、美紅を起こしてしまうに違いない。
僕はボンヤリと音楽プレーヤーで好きな曲を聞きながら変わり映えのしない窓の外を見続けるしかすることがなかった…。
※※※
耳にイヤホンを入れたままで、ようやく眠りに落ちかけていた頃、僕の服の左袖を引っ張りながら美紅が小声で話しかけてきた。
「ねぇねぇ…トイレ…どうしたらいいの…?」
時計を見ると、美紅が眠ってから2時間ほど経過していた。
トイレに行きたくなって目を覚ましたらしい。
だが、深夜バス初体験の彼女はどうしたら良いのか解らなくて僕に声をかけたのだろう。
「後ろの方にトイレついてるから…このバス…」
「一緒に行こうよ…」
「は?」
「着いてきてよぅ…解んないから…」
僕は仕方なくカーテンを開けて、美紅と一緒に車輌の後方部へ向かって歩いて行った。
「ありがとう…」
美紅がそう言ってトイレに入っていく。
彼女が出てくるまで手持無沙汰の僕は、車内をグルリと見渡した。
こんな時間とは言え、さすがに年末だけあって車内はすべてカーテンが引かれていた。
おそらく満員なのだろう。
―ジャァ~…
水の流れる音がして美紅がそっとトイレの扉を開けて出てきた。
「終わったよ…」
「うん…戻るか…」
「木下君は…いいの…?…」
「そうだな…」
僕は尿意を感じていなかったが、自分がトイレに行こうとしたら通路側の美紅を起こしてしまう…そう思って、とりあえず用を足しておこうと思った。
不思議なもので、それまで全く尿意を感じていなかったのに、そこへ立てば自然と排泄できる…用を足しておいて良かった。
トイレから出ると美紅が待っていた。
「先に戻ってればいいのに…」
僕は驚いてそう言った。
「えへへ…」
美紅はそう笑って僕の手を引いて席へ向かって歩き出した。
「眠れる…?…」
座席につくと美紅がすぐにそう尋ねてきた。
「いや…まだ眠くないな…」
「ごめんね…私が起こしたから…」
「大丈夫だよ…明日から、ずっと寝ていられるんだからさ…」
正月なんて、帰省したって別にやる事もない。
ハッキリ言ってお年玉狙い…それだけの為に帰省すると言っても良いくらいだ。
親不孝だが…。
「うん…そうだね…」
―チュッ…
美紅はそう言うと僕の頬に軽く唇を触れた。
「し、静かにしないと…他の人に迷惑だから…」
僕は照れ隠しにそう言って美紅を咎めた。
「ねぇ…何する?」
「何するって…もしかして…眠れないの?…」
図星っと言う表情の美紅。
「だって、少し眠っちゃったし…」
そう言い訳する。
自分が眠れないから僕にちょっかいを出すのか…。
「何って…音楽でも聞く?…」
僕は自分の音楽プレーヤーのイヤホンの片方だけを美紅に渡した。
しばらく、一つのイヤホンを左右に分け合って同じ音楽を聞く2人…。
美紅は自然に僕に身を寄せる形になった。
空いている右耳から、誰かの小さなイビキが聞こえる…。
「っっ!!!」
と、その時、僕は驚いた。
下半身に予期せぬ感触を感じたからだ。
その感触に驚いて自分の股間を見ると、美紅が右手で服の上からそこを|弄《まさぐ》っている…。
弄りながら僕の顔を見上げる表情は、イタズラっ子そのものだ。
「し~っ」と唇に指をあてて静かにせよとアピールする彼女…。
こんな狭いバスの中で、しかも殆ど満席と思われる中での行為…。
僕は興奮より怒りが込み上げて美紅の右手を振りほどいたっ!
…と言えれば良いのだが、残念ながら美紅にされるがままだった。
何故なら僕等は今、実家に向かって移動している。
今日から帰省して、再び僕らが地元から戻るのが1月5日…美紅に会えるのは早くても6日になるだろう。
それまでの2週間弱、僕は美紅の身体を自由に出来ない事になる。
高校時代の僕は彼女がいても中々SEXのチャンスなどなかったが、それでも良かったしそれを不満に思った事など無かった。
しかし、今は違う。
高校を卒業して、コチラの学校へ進学してからは、1人暮らしの美紅の部屋に殆ど毎日入り浸っていたし、余程の事が無い限り、彼女を抱き続けていた。
その上、彼女とのSEXは高校時代のそれと違い、美紅がネットから得た知識を駆使してくれるお陰で、僕が興奮する要素が満載だった。
僕は自分のことをSEXには淡白な人間だと思っていた。
実際、美紅と出会うまではそうだったと思う。
好きな人と一緒に居られれば満足だったし、会ってSEXしない日があっても一向に構わなかったのだ。
それが美紅と出会って変わってしまった…。
今では、彼女の身体を抱けない日があると辛かったし、溜めこんだ欲望は彼女の力なしでは決して満足に吐き出す事など出来なくなっていたのだ。
僕は今日から2週間、彼女に会えない事を思うと、彼女が弄る右手を引き離す事など出来なかった…いや、それどころか、何とかしてこの狭いバスの中で自分の欲望を吐き出す術はないだろうかとすら思った。
僕は静かに自分のズボンのファスナーを開けた…。
そ~っと開けたので、音はあまりしなかったが、それでも狭い車内にはファスナーが下がるジ~ッと言う音が響いたような気がした。
美紅は、僕がファスナーを下げると、すぐに右手をその中に滑り込ませ、トランクスの上から、もうクッキリと勃起した陰影の浮かび上がる部分をなぞるようにゆっくりと手を動かす…。
僕はゆっくりと動く美紅の小さな右手をしばらく見ていたが、ややもすると我慢できなくなってきて、トランクスの前に空いた穴の部分のボタンを外し、ボロンっと自分の勃起したモノを|曝《さら》け出した。
美紅は今度も、すぐさま僕のモノを握った。
直に感じる美紅の小さな手の感触は、すこしだけヒンヤリとしている。
だが、バスのエンジン音と誰かの小さな鼾の音まですぐ近くに聞こえるこんな場所で、自分のモノを丸出しにしている事と、それを可愛い美紅が握っていると言う事実…それだけでも気持ち良かった。
気持ちは良かったのだが、それだけで欲望を吐き出せるかと言うと、それには刺激が少し足りないようだった。
僕はこちらを悪戯な眼つきで見上げている美紅の頭をクイッと自分のモノに押し付けた。
舐めてくれ…と言う僕の意思表示はすぐに彼女に伝わって、美紅は音が出ないように慎重に、ゆっくりと僕のモノの先端に舌を這わせ始めた。
(気持ちいい…)
僕は今日から10日以上、この感触を味わえないのだと思いながら、目を閉じて股間の感触に集中した。
―ジュポっ…
1回だけ、美紅の口元からそれと解るような音が漏れた。
驚いて周囲を見回す僕と美紅。
どうやら、いつもと同じような激しい頭の上下はマズいようだ…。
「咥えて頭を上下させる」と言う行為を制限されてしまった美紅は、それでも僕のモノをペロペロと音がしないように舐め続けてくれた。
しかし、その感触もまた僕の欲望を吐き出させるまでには至らなそうだった。
美紅はその気配を察すると、僕のモノの先端部や茎の部分に舌を這わせながら、右手で再び男根を握って、音のしない程度にゆっくりと上下に扱き始めた。
(あぁ…気持ちいい…)
この行為も僕をすぐさま果てさせるような快感ではなかったが、ネットリとした快感を感じさせてくれる…時間がかかるかもしれないが、これならもしかすると射精できるかもしれない。
僕は再び目を閉じて、股間の感触に集中し始めた。
美紅は僕のその様子を伺って、射精の可能性を悟ったのか、先端部をゆっくりと舐めまわしながら棒の部分をゆっくり扱く…と言う行為を、文句も言わずに延々と反復し続けてくれた。
そのまま30分以上が経過した頃…ようやく僕は射精感を感じた。
眼を開けて股間を見ると、30分前と全く同じ姿勢のままで僕のモノを舐め続ける美紅の姿。
30分間もの間、ずっと僕のモノを舐め続けていた…と言う事実に興奮を感じた途端、僕は一気にマグマが吹き上がるのを感じた。
美紅の頭を乱暴に上から抑える僕。
それが、射精のサインだと気が付き、僕のモノの先端を素早く咥えた美紅は、右手を素早く上下に動かして扱き始めた。
―シュっシュっシュっシュっシュっ…
明らかに何かを激しく|擦る《こす》る音が車内に響く…。
少し勘の良い人なら、この座席で男が自分のモノを扱いている…その位のことは想像するかもしれない。
だが、その心配は長くは続かなかった。
ほんの10秒程度、美紅が激しく手を上下させただけで、僕は僕のモノの先端を咥えて待ち構えている彼女の口内へ精液を吐き出したからだ。
「んっ…ごほんっ…」
その瞬間、思わず口から出た呻き声を咳でごまかした僕。
しかし美紅は、口内に発射されている大量の精液にむせる事もなく無言のままで、僕の股間へ顔を伏せてじっとしている。
しばらくその状態が続いた後で、美紅はようやく僕の股間から顔を離した。
眼には悪戯な輝きを宿したまま、しかしニッコリと笑顔を見せて、美紅は口を開けて僕に口内を見せた。
こんなに出たぞ…と言う事を言いたかったのかもしれないが、毎日のように彼女と身体を重ねていた僕が射出した精液は、そんなに量が多いとは思わなかった。
美紅は口内を僕に見せた後で、大袈裟にそれを飲み込む仕草をした後で
「えへへ…」
と一言笑って、とっくに温くなったペットボトルのお茶を数口飲んだ。
動きを制限された中での、激しいフェラチオではなかったが、僕はこれまで美紅にしてもらった、フェラチオの中で今日のそれが一番深い満足感を得たと言う事に気が付いた。
激しく頭を振っての行為も良いが、ゆっくり、ネットリとした行為を長時間反復されて発射すると言うこと…それがこんなにも満足感を得るのだと言うことを、僕は美紅に教わった。
彼女の街のターミナルへ到着したのは、それから1時間ほど後だった。
なんとターミナルには、こんな時間にも関わらず、美紅のお父さんが待っていた。
僕は反射的に身体を低くして頭だけを窓から少し出して、その様子を見る。
こんな距離では、彼女が言わない限り、僕と一緒に帰省したなんて事は解らないだろうが、美紅は女友達と一緒に帰省する事になっている…その事実が僕にそうさせた。
(大事にされてるんだな…美紅…)
僕は、こんな時間にターミナルまで迎えに来た彼女のお父さんを遠目に見ながら思った。
(普段、俺が美紅にしている事が知れたら殺されるかもな…)
美紅からの希望とはいえ、彼女の顔に精液をぶちまけたり、車の中でSEXをしてみたり、彼女の大きなムネに男根を挟んでみたり…つい今しがたは僕がイクまで延々と男根を舐めさせたり…。
勿論、自分の大事な娘が男にそんな事をしている等とは、彼女のお父さんだって露程も思っていないだろう。
そんな事を考えているうちにバスは再び走り出す。
ターミナルには美紅とお父さんの姿…彼女はお父さんに気付かれないように小さく僕に向かって手を振ってくれた。
今まで美紅が座っていた隣の座席を触ってみる…そこには彼女の温もりだけが残っていて、その事が何だか無性に寂しかった…。
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