…お返し~前編~…
「おまえよ~、彼氏とはソッコーで別れたから、まだ処女なんだろ?」
「あたりまえじゃんっ!言っとくけど別れてなくても、そんな事簡単にヤらせないからね、私っ!」
最近、雄大と明日香のそっち方面の話題は益々エスカレートして遠慮が無くなってきた。明日香も慣れてしまったのか、最初の恥じらいが殆どなく、明け透けに雄大の話に乗っかるようになっていた。
「そうなんだよなぁ~、女って何で簡単にヤらせてくんないんだろ~なぁ・・・」
「当たり前でしょ!?それとも何?誰にでもホイホイと簡単にヤらせる女が言い訳?」
「そうじゃないけどよ~、でもヤらせてくれる女が居るならヤりてぇよなぁ・・・拓也」
最悪の場面で僕に話しを振ってくる雄大。
「まぁ・・・ね・・・」
僕は差し障りなくそう返答した。
だが、それを見た明日香が「はぁ~っ」と大きく溜息をついた。
「私は、逆に何でそんなに男の子ってエッチな事ばっか考えてるのか不思議だよ?・・・ねぇ、真由」
それから「やれやれ」と言った調子で真由ちゃんへ話を振る。
真由ちゃんは無言のままだったけど、コクリと小さく頷いたように見えた。
(やっぱり真由ちゃんはエッチな男は嫌いなのかな・・・)
僕は彼女のその姿を見て、そんな風に思った。
「そんなのおまえ・・・高校生くらいになれば当たり前だぜ?」
「そうかもしれないけどさ~・・・雄大の口ぶりだと相手が誰でも良いって聞こえるよ~」
「そりゃ、おまえ・・・出来れば好きな女とエッチできればそれが最高だけどよ~・・・それが叶わないなら仕方ないから誰でも良いやって意味だよ」
「ふ~ん・・・」
明日香は理解したのかしないのか、意味ありげに頷くと黙った。
しばらく続く沈黙・・・真由ちゃんが雑誌のページをめくる音だけが聞こえる・・・。
「してやろうか・・・?」
沈黙を破って明日香が言った。
「なにが?」
雄大も沈黙の後の明日香の一言に意味が解らなかったらしい。
「だからさ・・・エッチとかは無理だけど・・・ちょっと手でするくらいならしてあげるって言ってんのよ」
「ま、マジかよ!?」
明日香のセリフに雄大が色めき立つ。
そりゃそうだろう。
中学2年生とは言え、明日香はなかなかの器量の持ち主だ。
それに雄大はどうやら明日香に気があるようだ。
その相手が「手でするくらいならしてやる」と言うのだ。
「ちょっ・・・な、な、何言ってんだよ明日香っ!」
「そ、そうだよ・・・やめなよ・・・おかしいよ・・・そんなの・・・」
僕と真由ちゃんは全力で明日香を止める。
真由ちゃんはどういうつもりで止めたのか知らないが、僕としては雄大と明日香がそう言う関係になるのは構わない。
だけど、こんな4人一緒にいるような所で話す内容じゃないし、明日香にはもっと普通に恋愛して、自然の流れの中でそうした経験をして欲しいと言う兄心もあったのだ。
「いやぁ~実はさ~・・・雄大にしてもらった事あるんだよね・・・私・・・」
止める僕と真由ちゃんに向かって明日香は突然そう言った。
「して・・・って・・・なにを・・・?・・・」
真由ちゃんだけが驚く。
雄大は勿論、僕もその事は知っていたから別に驚きもしなかったが、彼女はそれを知らないのだから当然だ。
「だからさ・・・ちょっと色々あって・・・雄大にエッチな事してもらっちゃった事・・・あるのよ・・・」
「え・・・うそ・・・お兄ちゃんと・・・エッチしたの・・・?・・・」
「違う違う・・・エッチはしてないよ・・・ちょっと触ってもらっただけ・・・」
「で、でも・・・そんな・・・」
真由ちゃんは驚いたままの表情で雄大を見た。
「む、無理やりじゃねぇぞ・・・明日香がしてみてくれって言うからしたんだぜ?」
雄大はその怪訝な視線に向かって慌てて言い訳をする。
「だからさ・・・私ばっかしてもらって・・・アレだし・・・お返しに1回くらいしてあげても良いかなって・・・そう言う事よ・・・」
明日香はさも当然と言うように言った。
ボンヤリと聞いていれば、まぁ「してもらったから、お返しにしてあげる」と言うのは変ではない。
しかし、よくよく冷静に考えてみると、2人は付き合っている訳でもないんだから「してあげる」とか「お返し」とか言う話そのものが変だ。
「い、いいのかよ・・・明日香・・・」
「お返しなんだから・・・1回だけだよ?」
「い、いいよそれでも・・・」
「手でするだけだよ?・・・それ以上は嫌だからね・・・」
「い、いいって・・・それでも・・・」
僕と真由ちゃんは何度も何度も2人を止めた。
しかし、2人の間ではどんどん話が進んでしまって、ついには雄大が言った。
「ちょ、ちょっと、おまえら真由の部屋に行ってろよ・・・すぐ済むからよ」
目が既に興奮で血走っている。
相当興奮しているらしい。
僕はそれを見て、雄大を止める事を諦めた・・・。
「真由ちゃん・・・行こうか・・・真由ちゃんの部屋、俺入ってもいいかい?」
昔は何の気兼ねもなく勝手に真由ちゃんの部屋に出入りしていたけど、彼女が中学生になった頃からは、さすがに勝手に入ると言う事も出来なくて、今日も僕は彼女に一応了解を求めた。
「うん・・・でも・・・明日香が・・・」
「もういいよ・・・2人が良いって言うんだから・・・放っておこう」
僕はそう言うと真由ちゃんを促して部屋を出ようとした。
「ちょ、ちょっと待ってよ・・・」
明日香が出て行こうとする僕と真由ちゃんへ声をかけた。
「こ、ここに居てよ・・・」
「はぁ!?何言ってんだよおまえ・・・拓也と真由は出てった方がいいだろ?」
「だ、だって・・・雄大・・・なんか怖いよ・・・」
「何でだよ、何にもしてねぇだろ~が」
「なんか・・・すごい興奮してるみたいだし・・・」
「それは仕方ねぇだろ!?」
「だ、だから・・・雄大に襲われたら困るから・・・ここに居てよ・・・2人とも・・」
「お、襲うっておまえ・・・」
「そうじゃないとしてあげない・・・」
雄大は最後まで僕らに出て行けと言ったが、明日香が「しない」と言いだすと、渋々部屋に居座る事を承知した。
「け、けどよ・・・拓也はともかく、ま、真由の前でパンツ脱ぐってのはどうもよ・・・」
「恥ずかしいの?」
「そりゃ、おまえ・・・恥ずかしいに決まってんだろが・・・だからやっぱりよ、2人には隣の部屋に・・・」
「だぁ~め・・・そしたら雄大に何されるか解んないから・・・」
「何もしねぇって・・・だいたい、この2人が居たって、俺の事止められる訳ないだろ!?」
確かに正論だ。
柔道部あがりの雄大を、僕と真由ちゃんで抑え込める訳がない。
「そう言う問題じゃないの・・・2人の目があれば、変な事は出来ないだろうって言ってんのよ・・・」
それも正論だ。
例え腕っぷしで敵わなくても、僕達4人は昔から仲良しだし、ましてや真由ちゃんは妹だ。
その僕らの前で明日香が嫌がるような事は出来ないだろうと言うのが明日香の言い分だった。
「ちっ・・・なんだよ・・・?信用ねぇなぁ~」
「信用なんてする訳ないでしょ!?」
「なんでだよ・・・」
「自分の顔見てごらんよっ・・・相当ヤバい顔してんだから・・・」
明日香がそう雄大に言い返した。
「拓也・・・俺の顔・・・そんなにやべぇか?」
雄大が僕にそう訊いてきた。
いつもなら言葉を濁す所だけど、今日は可愛い妹の為にハッキリと言う事に決めた。
「目が血走ってるよ・・・このまま明日香と2人にしたら何をしでかすか解んない・・・そんな顔してる」
「ま、マジで!?・・・そ、そうか・・・」
雄大は素直に僕の言葉を受け止めたようで、それ以上僕と真由ちゃんに出て行けと言わなくなった。
「で?・・・するの?しないの?」
明日香が雄大にそう詰め寄る。
大きな体をしいた雄大に、気は強いとは言え、華奢な中学生である明日香が詰め寄る姿が何だかおかしい。
「す、するさ・・・」
「じゃあ・・・脱いで・・・それからどうするのか教えてよ」
「教える?」
「そうだよ・・・教えてくんないと出来ないに決まってるでしょ!?・・・言っとくけど私、兄貴のおチンチンだって見た事ないんだからねっ」
何故そこで僕が引き合いに出されるのか訳が解らない「お父さんの・・・」なら理解できるのに・・・。
「解った解った・・・教えりゃいいんだろ?」
「そうだよ・・・教えて・・・」
――ギッ
雄大が立ち上がると、椅子が大きく軋んだ。
――カチャカチャ・・・
それから、おもむろに彼がベルトを外す音が聞こえる。
――ギッ
そして再び椅子の軋む音・・・。
雄大はトランクス一枚の姿で椅子に腰を下ろして言った。
「とりあえず、パンツの上から触ってくれよ」
僕と真由ちゃんも、もう2人を止める事はしなかった。
だけど2人とも、視線は真っ直ぐに雄大と明日香に向けられていた。
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