…女の子ってどうやんの?~前編~…
明日香が彼氏と別れたと言う話は、僕にとっては然程の衝撃ではなかった。
まだまだ中学生だし、いろんな恋愛をするだろう。
まさか中学時代の彼氏が結婚相手・・・なんて事は今時そうそうあるもんじゃないだろうし・・・。
それよりも僕は雄大から聞いた話の方にショックを受けていた。
一緒に暮らしていると、妹なんていつまでも子供に見えるものだ。
その子供であるはずの明日香が、性に目覚め始めたばかりか、その対象を雄大に定めた事は明らかだった。
「なぁ・・・明日香・・・」
「なに~?」
あれから、雄大は明日香の事を「明日香」と呼び捨てにするようになった。
2人が付き合っているような様子もなかったし、あれから刺激的な話を聞く事もなかったから、僕達4人はいつもと同じように雄大の部屋にたむろってはアホな話をしたりしている。
「おまえパンツ見えてるぞ」
「ちょっとっ!エッチっ!!」
「バカやろっ、ホントにエロいやつは見えてるぞって教えねぇんだよ!」
「あ、まぁ・・・そっか」
でも目に見えて2人の距離は縮まっていると僕は思う。
真由ちゃんはどう思っているんだろうか。
そう思ってチラリと真由ちゃんへ視線を向ける。
彼女は相変わらず何も言わないが、2人の会話を聞いていて自分の下着も見えてはいないかと制服のスカートを直しているところで、そのスカートからスラリと伸びる真っ白い脚に、僕はどうしたってあの写真で見た彼女の下着姿を想像してしまう。
「おまえ、真由のパンツ見ようとしてねぇか?」
突然雄大が僕に言った。
「な、何言ってんだよっ、そんな訳ないだろっ」
「だってよ~、ずっと真由のスカート見てるからよ~」
「そ、そ、そんな事ないってっ」
僕が真由ちゃんを見ながら卑猥な妄想に耽っていたのは事実だが、下着を覗こうとしていた訳ではない・・・僕は全力でそれを否定しながら真由ちゃんの方をチラリと見た。
真由ちゃんは、きちんと校則で決められた長さのスカートでさらに脚を隠そうと引っ張りながら俯いて赤い顔をしている。
「そんな事ないんだって・・・」
僕は真由ちゃんに言うでもなく、雄大に言うでもなく、ポツリともう一度そう呟いた。
「まぁ、隠すなって・・・いいじゃねぇかよ・・・真由のパンツくらい見たって・・・なぁ?真由」
「い、いやだよ・・・そんなの・・・恥ずかしいよ・・・」
真由ちゃんは絞り出すように雄大にそう抗議する。
「別に減るもんじゃないしよっ、見せてやればいいじゃんよっ」
「そんな事・・・出来る訳ない・・・でしょ・・・それに・・・拓兄ちゃんだって見たくないよ・・・そんなの・・・ね?」
真由ちゃんは顔を赤らめながらそう言うと、僕を見上げた。
「あ、いや・・・その・・・」
だが実際に僕は雄大から写真を貰って真由ちゃんの下着姿を見ている。
「見たくない」などとは思っていないし、何と答えてよいか解らなかったのだ。
「見たくないって事ないと思うぜぇ~・・・なぁ、拓也」
それに追い打ちをかけるように雄大が皮肉な眼つきで僕を見る。
「い、いや・・・それは・・・その・・・」
僕は益々言い淀む。
「なんだよ?・・・どうせ真由の姿想像しながらオナニーしてんだろ?」
「お、オナっ・・・って・・・」
僕は雄大の暴言と言っても良いような発言に驚いたけど、それよりも真由ちゃんがどんな反応をしているのか気になって、反射的に彼女の方を見る。
彼女は彼女で僕がどう返答をするのか気になったのか、真由ちゃんと僕は視線がバッチリと合ってしまった。
それに気付くと彼女は急いで僕から目を逸らす・・・。
「そ、そんな事しないよ・・・」
僕は力なくそう言い返した。
「嘘つくなよ~っ、俺たちの年齢でオナニーした事ないってこたぁ無ぇだろ?」
「ゆ、雄大だって・・・明日香の事想像しながらオナニーするんだろ」
僕は雄大へ反撃してやろうと思ってそう言った。
しかし・・・。
「ああ、するぜ?殆ど毎晩な」
彼は事もなげにそう言った。
言いながら右手に何かを握るような手つきをして、それを上下にシコシコと動かす。
「ちょっと、そのリアルな手つきやめなよ~」
明日香は笑いながらその手つきを咎めたが、真由ちゃんはチラッとだけ雄大の手の動きを見ると、赤い顔のままでさらに深く俯いた。
「なんでだよ、男はこう言う手つきでオナニーするんだって、なぁ?拓也」
(なんで俺に振るんだよっ・・・)
僕はそう思ったが、さすがにアイドルじゃあるまいし「そんな事解りません」と言うのも白々しい・・・。
「ああ、まぁ・・・そうだな・・・」
僕は渋々そう答えた。
「ええぇ!?やっぱ兄貴でもするんだ~」
今度は明日香がそう言って食いついてきた。
「なんだよ?拓也がオナニーしてないとでも思ってたのかよ?」
「なんかね~・・・兄貴だけはそう言う事しないような気がしてた」
「んな訳無ぇっつ~の!拓也だってやりまくりだぜ?」
それから2人で勝手な事を言い合っている。
「そっか~・・・兄貴がねぇ~・・・自分でねぇ~・・・へぇ」
「な、なんだよ」
明日香があまりにも僕をジロジロと見ながらそう言うものだから、ちょっと気分が不快だ。
それに何よりも真由ちゃんの前でトップシークレットと言っても良いプライベートを暴露されるのが耐えられない。
「ねぇ、ねぇ・・・兄貴はさ~・・・何をオカズにしてする訳!?」
「お、オカズって・・・おまえ・・・」
「いいじゃんっ、教えてよ~」
まさか本人の目の前で「真由ちゃんの写真です」なんて事を白状出来る訳がない。
「やっぱりさ~・・・真由の事想像してんじゃないの~?」
「ば、バカな事言うな・・・」
「じゃあ、教えてよ~」
「ほ、本とか・・・DVDとかだよ・・・そう言うの見てするんだ」
僕は「真由ちゃんがオカズ」と言う事実がバレない為にそう言うしかなかった。
チラリと真由ちゃんを見ると、額が床に付きそうなくらいに俯いていて、どんな表情をしているのか解らないが、彼女の性格的にこう言う話は苦手なのは解りきっている。
「はははっ、ついに拓也も白状したなっ、ま、気にすんなって健康な男子なら当たり前なんだからよっ」
雄大は豪快に僕をそう笑い飛ばした。
今ほどその性格が羨ましいと思った事はない。
「健康な男子は当たり前だけどよっ、健康な女子はどうなんだよっ」
雄大が今度は明日香に向かってそう言った。
「ええぇ!?そう言う事女の子に訊くぅ?ふつう・・・」
「いいじゃねぇか・・・教えろよ・・・興味あるぜ?」
僕は前に耳にしてしまった明日香の卑猥な声を思い出した。
あの時、間違いなく明日香の部屋には彼女1人きりだった。
そこから聞こえる卑猥な声・・・彼女がオナニーをしていたのは間違いあるまい。
常習的にしているのか、あの時たまたましてたのかは解らないが、明日香は何と答えるのか・・・。
「まぁ・・・した事はあるけどさ~」
明日香は、僕がモジモジとしてようやくオナニー経験がある事を暴露したのが馬鹿に見えるほど、あっさりとそう白状した。
「やっぱ女の子でもすんのかぁ・・・そうなんだぁ・・・へぇ~」
「ちょっと感心しすぎだっての・・・」
「だってよ~明日香でもそんな事すんのかと思ったらよ~、拓也、知ってた?」
雄大がまたおかしなタイミングで僕に話しを振る。
まぁ、正直知ってた訳だけど「知ってた」と答える訳にはいかない。
「し、知る訳ないだろっ、そんな事っ」
「まぁ、そうだよな・・・でもよっ、結局みんなするんだって、オナニーくれぇ」
雄大がそう言って話をまとめた。
雄大と僕、それに明日香・・・結局3人ともオナニーしている事がハッキリしたのだから、彼の言う通りだ。
(あ・・・そうだ・・・)
そこまで考えて僕は、まだもう1人この部屋にはオナニー経験を暴露していない人間が居た事を思い出す。
でも、その人はとんでもない恥ずかしがりの人見知りだ・・・。
とてもじゃないがこんな話は振れない。
僕は何も言わないままでチラリと真由ちゃんを見た。
ふと見廻すと、雄大と明日香も真由ちゃんを見ている。
彼女だけがまだオナニー経験について口を開いていない事に2人とも気が付いたに違いない。
真由ちゃんは、ずっと俯いていたが、突然部屋の中が無言になった事に違和感を感じたのか顔を上げた。
そして他の3人が一斉に自分を見ている事に気が付く・・・。
「な、なに・・・?・・・」
真由ちゃんは3人の視線に向けて一言そう言った。
「あ、いや・・ごめん・・・真由からオナニーの話聞いてなかったなぁと思って・・・つい、見ちゃった・・・」
明日香がそう言った。
「俺は別に全然興味ねぇけどよ~、拓也が知りたがるじゃね?・・・真由のオナニーの話」
「そんな事ないって、変な事ばっか言うなよ」
「そっか?・・・でも興味はあんだろ?」
(確かに、こんなに恥ずかしがりで人見知りで・・・今時珍しく色の入っていない真っ黒い髪を肩まで伸ばした清純そうな真由ちゃんが、実はオナニーをしていたなんて話を本人の口から訊いたら興奮するよな・・・)
僕は不覚にも雄大の問いかけの後で、一瞬そんな事を考えてしまって反応が止まった。
その間を雄大は見逃さなかった。
「ほら、拓也が興味あるってよ・・・どうなんだよ真由・・・やっぱおまえもしてんのか?」
雄大が何の遠慮もなく真由ちゃんに訊ねた。
「そ、そ、そ、そんな・・・事・・・したこと・・・ない・・・」
「おいおい、今さら嘘はないだぜぇ」
「そうだよ~、それじゃ私だけエロいみたいじゃんっ」
一斉に2人から抗議の声があがる。
「ほ、ホントだもん・・・したこと・・・ないもん・・・」
「ホントに?」
明日香が執拗に真由ちゃんに訊ねる。
どうやら彼女は彼女なりに、自分だけにオナニー経験があると言う事実が恥ずかしいらしい。
「ホントだよ・・・そんなの・・・解んないもん・・・」
「解んないって何が?」
「だ、だから・・・その・・・やり方とか・・・解んないし・・・」
真由ちゃんは元々赤くした顔をもっと赤らめて小さくそう言った。
≪
前へ /
次へ ≫
Information