野本さんの精液を口で受け、それを飲みこむ様を直に見てから2カ月以上が経過していた。意識して期間を開けた訳ではないけれど、野本さんと僕の仕事の都合が合わなくて、なかなか彼を自宅に招く事が出来ずにいたのだ。
別に喧嘩していた訳ではないから、この2か月の間に僕と妻との間には普通に夫婦の営みはあったけれど、本当に仕事が忙しくて、頻度はやや少なかった。
妻は「もう、あんな事はしたくない」と言ったけど、夫婦の営みの時に野本さんの話題を出しても、特に怒る様子もなかったし、僕が野本さんに再びフェラチオさせようとしている事は察している様子だった。
だけど、さすがに僕が3Pを画策しているとは思っていない様子だった。それを望んでいる事は妻も知っている。なぜなら、1年以上前に3Pをしないかと誘って、結婚以来初めてと言っても良いくらいに彼女を怒らせているからだ。
その時に、僕は妻に素直に詫びている。変態行為を持ちかけたのは僕だし、彼女にはそれを受け入れる責務など全くない。だから謝ったのだ。
妻はその謝罪を受け入れて僕を許してくれた。と同時に、望んではいても2度と3Pがしたいなんて言い出さないだろうと思ったに違いないのだ。
(やっぱり直接は誘えないよなぁ)
今度ばかりは同じ轍を踏む訳にはいかない。前回は直球勝負で真っ直ぐに妻を3Pに誘って玉砕しているから、今度は別な方法で攻める必要があったのだ。
※※※
「あ、綾乃、来週の土曜日に野本さん遊びに来るから、お義母さんに孝太預かってって頼んどいてよ」
「・・・孝太、居ても良いじゃん」
「でも、孝太がいたら綾乃があんまり呑めないじゃん」
「いいよ、別に。たまには2人で外で呑んでおいでよ」
明らかに前回のようになるのを警戒する妻。「天然」「楽観的」「鈍感」の妻が「警戒」を出来るというのはちょっとした進歩だなと思って微笑ましくなる。
だが、そんな覚えたての警戒などどうと言う事はない。
「何か野本さんがまたお取り寄せしてくれたらしいよ」
「え、カツオのタタキはもういいよ」
前回の野本さんの土産である「カツオのタタキ」は妻にはあまり好評ではなかった。
「いや、今度は別だってさ、綾乃が気に入るものだって言ってたけど、何を持ってくるのかは俺も知らない」
「ふ~ん」
「だから、家で呑もうと思うからさ、孝太のこと、頼むよ」
「・・・・・解った」
「サンキュー」
「でも・・・」
「ん?なに?」
「孝太を預けるって事は、やっぱり・・・そう言う事でしょ?」
「そう言うって?」
解っているくせに意地悪く訊き返す。
「だから、また、野本さんに・・・する・・・って言うか」
「する?なにが?」
さらに意地悪な僕。普通ならワザとらしい所だけど、前回の行為から2か月以上も経過している事が、僕の意地悪を少し自然にしてくれる。
「あの・・・だから・・・口で・・・野本さん・・・」
「口で野本さん?」
「うん・・・野本さんに・・・口で・・・」
これ以上知らんぷりするのは不自然だし、そろそろ話を進めてやろうかと思う。
「あぁ、帰る前にしてもらおうと思ってるけど・・ダメかな?」
僕は「当然」と言うニュアンスを込めながらも、妻の機嫌を損ねないように細心の注意を払ってそう答えた。
この「当然」のニュアンスが結構大切だ。妻はあまり気が強い方じゃないから「当たり前でしょ?」と言うニュアンスの押しに弱い。
本当は「遊びに来た友人にフェラチオするのが当然」なんて変な話なんだけど・・・。
「口だけだし、そんなに時間はかからないと思うんだけど・・・ダメなら、また来週にしようか?」
僕は優しくそう言いながら、妻の頭を撫でる。優しく言ってはいるが、その実「今週、フェラしないなら来週フェラしてもらうから良いよ」と言う、とんでもなく優しくない内容なのだが。
実は、今日の僕は妻に「断られたい」と思っていたのだ。毎回、野本さんの件を持ち出すと1度は断られるけれど、今日はもっと強く「絶対にイヤ」と言うニュアンスで断られたいと思っていた。それが僕の考えた作戦なのだ。
「いや、来週とか・・・そうじゃなくって」
案の定「フェラチオするのが当然」みたいな僕の振る舞いに違和感を訴える妻。
「ん?どしたの?」
「もう・・・あんな事・・したくない・・なって」
途切れ途切れに遠慮がちにそう言う妻。本当は遠慮する必要なんてないのだが、僕があまりにも当然のように言うものだから、何だか断るのが悪いような気がしているのだろう。そう言う女なのだ。
「あんな事って?フェラ?」
「うん・・・」
「え?口でするのもダメ?だって口だけならって・・・前に」
「そうだけど、あの時は孝介に見られながらじゃなかったし・・・」
「ビデオ撮影に戻せば良い?」
「そうじゃなくて・・・するのが・・ちょっと」
「あ、口に出されたのがイヤだった?」
「それは・・それもイヤだったけど・・・」
「それもって事は・・・あ、出されたのを飲めって俺が言ったから?アレはゴメンね、俺、興奮しちゃって・・思わず」
「あの、それもそうだけど・・そうじゃなくて・・・」
「違うの?」
「するのが・・・嫌だなって・・・」
「・・・そっかぁ」
僕は残念そうに言った。しかし、内心ではここまで僕の予想通りに会話が進んでいる事にほくそ笑む。
「そうだよね・・・普通はそうだよね」
「ごめんね・・・」
この場面で謝るところが妻の天然、かつ、可愛いところだ。
「いや、好きでもない人のを口でするなんて嫌がるのが普通だよ、変なのは俺だから」
「・・・・・」
「ちょっとハードル下げれば協力してくれるかい?」
「ハードル?」
「うん、俺、こんなだからさ、口でするのは無理でも、他に何か協力してもらえないかなと思って・・・」
「・・・どんな事?」
「野本さんに触られるのは・・・イヤだよね、やっぱり」
「うん・・・恥ずかしい」
「そっかぁ・・・と、なると・・・後は・・・見られるだけってのは?」
「見られる?」
「うん・・・」
「あの・・・裸・・を?」
「裸って言うか・・・うん、まぁ」
「でも、そんなの変でしょ?」
「変じゃないよ、いつも俺たちがエッチする時は2人とも裸だろ?」
「エッチする時はそりゃあ裸だけど・・・どういう事?」
「だからさ、野本さんの前でエッチしようよ」
「えぇぇぇ!?何言ってるの!?そんなの無理だよ」
「だけど、エッチもしないのに野本さんの前で裸になるなんて、もっと変でしょ?」
「それはそうだけど、そんな恥ずかしい事出来ないよ」
「口でするより恥ずかしい?」
「恥ずかしいよ~、口でする時は服脱がないもん」
「じゃあ、口でする方がいいかな?」
「え・・・でも・・・」
「他の男のを口でするのはイヤなんだよね?」
「うん・・・」
「それなら、エッチする所を見てもらおうよ、それだけで俺、相当満足すると思うからさ」
「だって・・・そんなの・・・」
「野本さんには指一本触れさせないから」
「・・・・・」
「明かりだって勿論暗くするし、ビデオも撮影しなくたって良い」
「でも・・・」
「いつも2人でしてるエッチを、ただ野本さんに見てもらうだけ、ただそれだけだから」
「・・・・・」
「ね?・・・口でするよりも良いでしょ?見てるだけなんだよ?野本さんに触られる事もないしさ・・・ね?」
「ホントに?・・・ホントに触られない?」
「ホント、ホント、絶対に触らせない、約束する」
「絶対、見るだけ?ビデオも撮らない?」
「撮らない、撮らない、絶対に撮らない」
「お部屋も暗くしてくれる?」
「いつもエッチする時と同じダウンライトだけにするから、綾乃はホントにいつものエッチをするだけだから」
「それを、野本さんが・・・見る?」
「そう」
「孝介は・・・それで興奮するの?」
「やってみないと解らないけど、綾乃が野本さんにするのを見るのと同じくらい興奮すると思うんだ。これなら、綾乃は俺以外の男に触られずに済むし・・・ダメかな・・・」
僕は一気に捲し立ててから、最後に綾乃の返答を求めたままで黙った。言おうと思っていた事はすべて言った。綾乃にとってはすごく恥ずかしい事だと思うが、前回のように口内に射精されて、あまつさえそれを飲みこまされるなんて事はないから、YESと言ってくれる可能性はあると思っていた。
「どうしても無理だったら、途中で止めにしてくれる?」
しばらく考えた後で妻はそう言った。
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