佳純は自分から、性交相手の男根が「硬い」だのと口走るような女ではないと思っていた。
しかし、先日、会社のアルバイトである島田君と関係した時、彼女は僕が何も言っていないのに、自らの意思で彼のモノが「硬い」と連呼した。
「島田君が初めてだって言うから、自信つけさせてあげようと思って・・・ほら、初めての時って、途中でダメになっちゃう子いるでしょ?」
佳純はそれを、島田君の為にあえてそうしたのだと弁解したが、その場面の一部始終を見ていた僕には到底そうは思えなかった。
(俺の見ていない所でセックスする佳純を見たい・・・)
だから、僕がそう思うようになるまでに、そんなに時間はかからなかった。
だが、本当に僕の居ない所でただセックスをされても、それでは何にも面白くない。
僕はしばらく使っていなかった、ライター型カメラを使って、一計を案じた。
「もう一度、島田君としてみてくれないか?」
ある日、夕食の後で僕はそう切り出した。
「え?もうこの間ので最後って言ったじゃない・・・どうして・・・」
「島田君に自信を付けさせてあげたいって言ってたじゃないか」
「それとこれと、どういう関係が・・・」
「どうやら島田君・・・佳純の事をかなり気に入ったようでね」
「え・・・」
「それに一度きりの行為で2度目が無い・・・と言うのは男にとってキツいものだよ。自分のセックスが下手だったのかなと不安になる」
「で、でも・・・」
「そうだ!今度は彼に自信をつけてもらうためにも、僕はどこかへ外出していようか?」
それは最初から決めていた事だったが、僕はさも今思いついた名案だといった調子で佳純に提案した。
「そんな!それじゃあ、何のために啓祐以外の人とエッチするのか解らないじゃない!」
「前回までは俺の為・・・でも、今度は島田君のためさ」
「そ、そんなの嫌よ・・・」
「勿論、後から佳純と島田君がどんな事をしたのか教えてもらうつもりだよ、今回はそれを聞かせてもらうだけで我慢するさ」
「どうして・・・この間は啓祐も近くに居てくれたじゃない・・・」
「いつまでも僕に指示されながらセックスしてたんじゃ、島田君も自信がつかないだろう?1人でさせてあげたいと思うのはそのためさ」
勿論そんな事は嘘だ。島田君は真面目な好青年だと思うが、彼に経験を積ませるためだけに妻を差出すものか。僕は僕が見ていない時に佳純がどうなるのかを見たかった。だから、こうして彼と佳純を2人きりにはするが、自分が留守の間の寝室は例のライター型カメラで一部始終を盗撮するつもりだった。
「この間会ってみて解っただろ?島田君は良いやつさ、とてもじゃないけど佳純を怖がらせるような事が出来る奴じゃない、だから2人きりでもそんなに不安じゃないだろ?それとも怖いかい?彼のことが・・・」
「怖いなんてことないけど・・・」
「じゃあ、セックスの経験が浅いから、彼とでは楽しめない・・・とか?」
「そんな!楽しんでるなんて、私は啓祐がそうしろって言うからっ・・・・」
「解ってる、解ってるさ、だから今回もこうして頼んでるんだ・・・いいだろ?」
長い長い沈黙が流れたが、それはこの手の話をする時には毎度のことだ。
僕は根気強く佳純が口を開くのを待った。それが一番得策だと言う事を経験で知っているのだ。
「ホントのホントに最後にする?もう島田君とも他の男の子とも・・エッチさせない?」
沈黙の後で佳純が言った。
佳純は優しい。優しいを通り越して「嫌」と言えないような女だ。僕はそれを知りすぎる程知っている。だから無言のまま、すがりつくような目で彼女を見続けていれば、佳純がこんな風に返答してくれると信じていたのだ。
「本当に佳純がイヤなら仕方がない・・・他の男とセックスするのはこれっきりにするよ」
「・・・・出来る?」
「出来るさ」
「また、お仕事に差し支えるんじゃない?」
「うん・・・それは、そうかもしれないけど・・・でも、佳純がイヤなら仕方がないからさ」
僕はまた寂しそうな視線を佳純に向けて言った。
「・・・いつ?」
彼女は僕に寂しげな視線を送られた事に困った表情を見せながら黙っていたけれど、これを最後にするかしないかと言う結論は出さないままで、島田君と身体を重ねる日がいつなのかと訊ねてきた。
※※※
「ただいま!」
毎日忙しく仕事をしているが、今日はいつにも増して忙しかった。理由は簡単で、僕は今日、どうしても残業したくなかったから、目の前にある仕事を猛烈な勢いで片付けた。ところが仕事と言うのは後から後から湧いてくるもので、到底全部キレイさっぱりと終わるものでもない。
結局僕は明日に仕事を残す結果になってしまったが、それでも定時ピッタリには会社を飛び出す事に成功したのだった。
「・・・おかえり・・・なさい」
佳純が硬い表情で僕を出迎えてくれた。
「ああ、ただいま」
「・・・・・」
それから、少しだけ気まずい沈黙が流れた。
目の前にいるエプロン姿の佳純。
僕の為に夕食の準備をしてくれていたのだろう。可愛らしい顔に優しい性格、それに男好きのするスタイル・・・僕は佳純に何の不満もないし、夫婦の間だって上手くいっている。
だけど、今目の前にいる彼女は、予定通りであれば今日の昼間、ほんの数時間前に僕達夫婦の寝室で、若い男の子とセックスをした後なのだ。
島田君と佳純との2度目の行為は、僕が仕事に行っている間の昼間に決まった。佳純もパートが休みだったし、島田君は学校が始まってはいたものの、気ままな学生生活と言う事もあって、僕の眼がない所でセックスをするとなると、それが一番自然な形だったのだ。
「ご飯にするでしょ?」
勿論、その事は僕も知っている。だけど、その話題に全く触れずにスーツの上着を脱ぎ始めた僕に、佳純は一言だけそう言った。
「ん、ああ、いや、風呂の後にしようかな」
「そう?」
「ああ、良かったら佳純が先に入っておいでよ」
「私?私は・・その・・・」
「どうした?」
「さっき、シャワー浴びたから・・・」
答え難そうに彼女はそう言った。答え難かったのは、そんな時間に浴びるシャワーが島田君とのセックスを連想させるからだろう。
「そうか、じゃあ、俺が先に入るよ」
「うん」
「でも、その前にちょっと片付けなきゃならない仕事があるから、30分くらいしたら入るよ」
僕は仕事を自宅に持ち帰らない主義だ。どうしても止む無くそうする事もあるけど、今日は仕事など持ち帰っていなかった。
何の事はない・・・少しでも早く、佳純と島田君の昼間の行為を盗撮した映像を見たかった・・・その一心から出た嘘だった。
※※※
多少の不安はあった。
島田君は大人しい性格だが、佳純は魅力的だし、何よりも彼はまだ若く、セックスの快感を知ったばかりだ。
佳純には、島田君とのセックスはきちんとベッドでするようにと言って置いたが、若い彼が暴走して、他の場所で始めてしまうのではないか・・・そうなると、このカメラには何も映っていないのではないかと言う不安だ。
――カチャっ
だから、乾いた音とともに、2人が寝室に入って来る姿がモニターに映った時には、内心大きくガッツポーズした。
無言のまま寝室に入って来る2人。先頭が佳純で、その後ろに島田君が付いてきたような格好だ。
良く見ると、島田君の顔は紅潮していて、佳純の髪は少し乱れているように見える。
島田君が来ることを予め知っていた佳純が、寝癖のままで彼を出迎えるとは思えないから、このカメラに映っていない所で何かあったのではないかと思ったが、それは後から佳純に直接問いただすとして、僕は映像を先へ進めた。
「あの・・・その・・奥さん・・・」
「ん?なぁに?」
しどろもどろに話しかける島田君に、クルリと振り向いて可愛らしい笑顔を見せる佳純。
その姿は、僕の目の前で鈴木コーチや島田君に抱かれた時には見せない、年上の余裕を感じさせた。
「本当に・・・いいんですか?こんなこと・・・係長に申し訳なくて・・・」
「その係長がこうしろって言ってるんだから・・・」
「・・・・・」
「それとも、私みたいなおばさん相手じゃ嫌なのかな?」
「そんなっ、お、おばさんだなんて・・・奥さんは可愛くて・・・優しくて・・・それに・・・」
「それに?」
「それに・・・エッチだし」
「やだな~、可愛いと優しいは嬉しいけど、最後のは褒め言葉じゃないんじゃない?」
佳純がクスクスと笑いながらそう言う。
「ほ、褒めてるんですよ・・・さっきの・・・口でしてもらったのも気持ち良かったです・・・すごく」
(・・っ!)
この部屋に入ってきた時から、島田君の顔が赤かった理由と、佳純の髪が乱れていた理由が理解できた。
この映像の前に、寝室以外の場所で佳純は島田君にフェラチオしていたのだ。
「あ、あれは島田君が我慢できないって言うから・・・ね、その事は啓祐には内緒にしてね?」
「どうしてですか?係長も今日のことは知っているのに・・・」
「それは・・・島田君とエッチをするようには言われてるけど、口でしてあげるようには言われてないから・・・」
「じゃあ、どうしてしてくれたんですか?」
「だから、あれは・・島田君が我慢できないって言うから、可哀そうに思って・・・先にちょっとだけ・・・してあげようかな・・って」
「ちょっとだけ・・・」
「そう、ちょっとだけ」
「じゃあ、またしてくれますか?また我慢できなくなってきました、僕」
「・・・・・」
「だ、ダメでしょうか・・・」
「・・・いいよ、お口で・・してあげる・・・ちょっとだけ」
「お願いします・・・ちょっとだけ」
佳純の声に心なしか艶っぽい色香が混じり始めたような気がする。
スイッチが入った・・・とでも言うのか、とにかく急に場の空気が「そうした雰囲気」に変わったのを画面越しに感じる。
――カチャカチャ・・・ゴソゴソ
佳純がベッドの横に立ちすくむ島田君の足元に跪いて、彼のジーンズのベルトを外して脱がせている。
島田君はそれを黙って見下ろす。
「・・・あっ・・」
そうして、彼のトランクスを脱がせて、勢いよく彼の男根が解き放たれると、佳純はそれを見て小さな声を上げた。
「さっき出したばかりなのに・・・もうこんなになってる」
真っ直ぐに男根を見ながらそう言う佳純の声は完全に「女」だ。
「奥さんがエッチだから・・だから、こんなになっちゃって」
「もう、それは言わないでって言ったじゃない」
「あ、すいません・・・あ、うっ」
佳純は、彼が「すいません」と言い終えるか言い終えないかのうちに、目の前に屹立する男根をパクリと咥えた。堪らずに呻く島田君。
ヌロっヌロッとゆっくり佳純の口に出入りする男根がハッキリと映っている。
「あ、ああ・・・奥さん・・・気持ち良い・・・」
「んっ・・・んっ・・・んはぁ」
佳純は、この映像に映る前に島田君に口で奉仕してあげたらしい。その時の詳細な事情は分からないが、どうやら興奮して我慢できなくなった島田君を、佳純が口で鎮めた・・・と言う事のようだ。
僕は目の前の映像を見ながら、その時の佳純が何と言って彼に口奉仕してやったのかを想像する。
「お口でしてあげる」「舐めさせて」「咥えたいの」そんな卑猥な言葉を佳純が言っているとは思えないが、僕は脳内で、そんな事を口走る佳純の姿を妄想しながら、目の前の画像を凝視し続けた。
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