――ペロっペロっ
それは到底人妻とは思えない、たどたどしいフェラチオだった。
鈴木コーチにどれほどの女性経験があるのかは知らないが、あの程度のフェラチオで満足するほど、経験値が低いとは思えない。彼はなかなかのイケメンなんだし・・・。
「あぁ・・・奥さん」
それでも彼は大袈裟に快感を表現して見せた。或いは、夫の眼を盗んで人妻と情事に耽ると言う背徳感が、たどたどしい舌使いを何倍もの快感に引き上げたのか。
「奥さん・・・気持ちいいです・・・ご主人が羨ましいですよ」
彼は時折、そんな事を言いながら大袈裟に彼女の口技を褒めちぎる。
確かに昔の佳純は、今、鈴木コーチにしているような稚拙なフェラチオしか出来なかった。しかし、今となっては、可愛い顔をしていても一応人妻だ。
佳純が本気を出せば、もっとイヤらしく濃厚なフェラチオが出来るはずだから、今の彼女は、いわゆる「猫をかぶっている」状態なのだろうと思う。
しかし、そんな「猫をかぶっている」状態も、長くは続かなかった。
佳純の頭の動きが少しずつ激しくなっていく。
元々、佳純は奉仕好きな方だと思う。僕と夫婦の行為をしていても、献身的と言えるほどに僕を気持ち良くしようと努力してくれる。
その優しさは僕だけに向けてくれるものだと思う・・・普通は。
けれど、今の佳純は普通の状態ではない。
久しぶりに触れる、夫以外の硬い肉棒。それに舌を這わせる度に感激の声を漏らしてくれる若い男・・・。
どうやら僕が思っているよりも、もっと佳純は献身的な女だったようだ。
コーチが佳純を褒める度に、どんどんイヤらしくなっていく佳純のフェラチオ。
――クポっ・・・クプっ
そしてついに、佳純は僕にするのと同じように、目の前の男根を口内深くまで咥えこんでしまった。
「お、おお・・・っ・・・すごい・・・深くまで・・っ・・・」
これまでの大袈裟な声とは明らかに違うコーチのセリフ。男根の2/3以上が口内に飲みこまれた事で、大袈裟なセリフを吐く事も出来ないようだ。
「んっ・・・ふっ・・・んっ・・ふっ」
口から男根を離さないように、鼻呼吸しながら男根を咥え続ける佳純。
――クポっ、クポっ、クプっ
イヤらしい音が室内に響く。
――チロチロチロっ
佳純が時折、深く咥えた男根を口から出して、茎の部分や先端にチロチロと舌を這わせるようになった。そうかと思えば、次の瞬間には思い切り深く、再び男根を飲みこむ。
(完全に本気になった・・・な)
あれは、いつも僕に見せるフェラチオと同じだ。あのまま段々と頭の上下運動が激しくなっていくのが、いつもの佳純のフェラチオなのだ。
「うっ・・お、奥さん・・・そ、そろそろ・・・」
コーチは慌ててそう言った。彼女とは違う、人妻の濃厚なフェラチオに、彼自身も我慢の限界を迎えつつあったのだろう。
「んっ・・・はぁ・・・っ」
佳純はコーチに言われるままに、彼のモノを舐めるのを止めた。
それから、彼の次の指示を待つように、コーチの足元にチョコンと座って黙りこんでいる。
「奥さん・・・もう・・・」
眼にありありと興奮の色を宿した若い青年が、待ちきれない様子で佳純を組み伏せようとした。
「あ・・・ま、待って・・・待ってください」
「そんな・・・ここまで来て・・・」
「違う・・・違うの・・・」
佳純がベッドから降りた。それから、近くにある僕のデスクの引き出しを開けると、そこからコンドームを取り出す。
「これ・・・使ってください・・・」
「あ、そ、そうですね・・・ははは・・・つい興奮してしまって」
つい興奮してしまって、生で挿入するところだったと言うのか。冗談じゃない、そこまで許した覚えはない。
コーチは渡されたコンドームを受け取ると、慣れた手つきでそれを装着した。
「じゃあ、奥さん・・・」
それから、仕切り直して佳純に声をかける。
佳純はそれを聞いて、何を指示された訳でもないのに、彼の足元にコロンと寝転がる。
しかし、やっぱり恥ずかしいのか、両脚の膝同士を擦りあわせるようにピタリと閉じたままだ。
「奥さん・・・入れますよ」
コーチは、そんな佳純の両脚に手をかけると、左右に容赦なく拡げた。それから、自分のモノに右手を沿えると狙いを定める。
「あっ・・・あぁぁぁっ・・・んっ」
佳純が喘ぎ声をあげた。
僕の位置から結合部は見えないが、その声で、僕は佳純とコーチが一つになった事を知る。
(あぁ・・ついに・・・ついに・・・佳純が・・・)
――ギシっ・・・ギッシ、ギッシ・・・
まだそんなに激しく動いている訳じゃないのに派手に軋みだす古いベッド。
「あっ・・・あ・・・あっ・・・あ」
その軋みに合わせるように喘ぐ佳純。目はいつものように硬く瞑っているが、明らかに快感を押し殺しているような表情をしているのが解る。
と、佳純が正常位で交わるコーチの背中に両手を持っていった。
それから、ハッとした表情を浮かべて、その両手を彼に廻す事なく、脇のシーツを強く握る。
佳純は、僕との行為でも、夢中になり始めると背中に手を廻してしがみついてくる。今、一瞬、自分に圧し掛かる男が夫以外の男性だと言う事を忘れかけていたのだろう。
つまり、ああやって快感の表情をなるべく表に出さないように意地を張ってはいても、佳純はセックスに夢中になりつつあると言う事だ。
「はぁはぁ・・はぁ・・お、奥さん・・・気持ちいいですよ」
「あっ・・あぁ・・・あぁ・・っ」
――ギシギシっギシっ
ベッドの軋みが大きくなってきた。段々と激しくなるコーチの腰の動き。
ところが彼は、一旦腰の動きを止めた。それから、器用に佳純の片足を持って、クルリと彼女を横に向ける。
それから、横向きの彼女を再び突き始めた。
「あぁ・・・っ」
僕とは普段しない体位だ。僕は正常位の後は佳純を裏返してバックにしてしまう。しかし、コーチはその間にもう一つ、横向きの体位を挟むのが好きなようだ。
(あっ・・・・!)
僕は息を飲んだ。
佳純が横向きになった事で、僕の方を向きながらコーチに突かれる形になった。そして佳純は、今まで硬く瞑っていた目を開いて僕の方を見たのだ。
佳純と眼が合う。
眼が合ったまま、ユサユサと僕以外の男に突かれる佳純。その表情は快感を押し殺しながらも、悲しいような・・・興奮しているような・・・何とも言えない曖昧な表情だ。
だが一つだけ言える事・・・そんな表情を浮かべながらコーチに犯されている佳純の姿に、僕は生まれて初めてと言っても良いくらいの大きな興奮を感じていた。
(はぁ・・・はぁ・・・はぁ)
呼吸が荒くなる僕。室内の2人が行為を終えて黙ってしまえば、おそらく僕の呼吸が聞こえてしまうだろう。危険なのは解っていたが、我慢が出来ない。
そうして、荒い呼吸のまま、トランクスの中で硬くなっている自分のモノをズボンの上から摩る。
(うっ・・・!)
中学生でもあるまいに、それだけで果ててしまいそうな快感を感じる僕。
佳純はまだ目を開けて、そんな僕の一部始終を見ながら、コーチに突かれ続けている。
「あっ・・あぁぁっ・・んっ・・んぅ!」
佳純が再び目を瞑った・・・と同時に、タガが外れたように大きな喘ぎ声を上げる。
この異常な状況に得も言われぬ興奮を感じていたのは、どうやら僕だけではなく、佳純も同じだったようで、彼女はついに快感を我慢する事を止めた・・・。
「あんっ・・・あんっ・・・あっ・・んっ!」
「き、気持ちいいですか?気持ちいいですか?」
急に本性を現したような人妻の喘ぎに、興奮を隠せない鈴木コーチ。
「あっあ・・・あぁ・・・き、気持ちいい・・です」
「あぁ、奥さん・・・僕も、僕も気持ち良いですよ、すごくっ!」
興奮に身を任せて、コーチが佳純の身体を裏返した。今度は後ろから可愛い佳純を犯すつもりらしい。
「あっ、あっ・・あっ・・・あっ・・・は、恥ずか・・しい」
「恥ずかしがる事ありませんよ、きれいです・・・奥さんっ」
――パンッ、パンッ、パンッ・・・
コーチの腰と佳純の尻がブツかる音。
「あんっ・・・あんっ、あんっ」
遠慮がなくなった我妻の喘ぎ声・・・。
(はぁ・・はぁ・・・か、佳純・・・佳純・・・)
めまいがしそうな程の興奮を抱えながら、それを覗く僕。
「だっ、ダメだ・・奥さん・・っ・・俺・・・もうっ」
コーチが、その引き締まった体躯に似つかわしくない情けない声を上げた。
「あっ・・あぁっ・・・あっ」
「奥さん・・・も、もう・・・だ、出します・・・よ」
「あっ、あっ、あっ・・・は、はい・・・はいっ・・ど、どうぞ・・・出しても・・・あっ・・あぁ・・い、いいです・・よ」
「あぁっ!奥さん・・・イクっ・・・イクッ!」
後から激しく佳純を突いていたコーチの動きが急に止まった。それから、僅かに2、3度、静かに腰をグラインドさせる彼。
「ふぅ~っ・・・」
そうして少し経つと、大きく息を吐いた。傍から見ていても解るくらい、彼がたっぷりと射精したのが解る。
「奥さん・・・すごく気持ち良かったです」
「・・・はい・・良かった・・・です」
どこかぎこちない後戯が始まった。この後、2人がどうなるのか解らないが、行為が終わった以上、ここに長居する訳にはいかない。存在がバレてしまっては大変だ。
僕は後ろ髪を引かれる思いで静かに自宅を後にした。
※※※
僕は24時間営業のファミレスで時間をつぶした後、深夜0時を少し回った頃に帰宅した。
佳純は起きて僕を待っていてくれたが、鈴木コーチはきちんと客間に移動して眠っていたようだった。
帰宅した時、佳純は再びシャワーをしたようで、髪が濡れていた。僕はすぐにでも彼女を押し倒したい衝動に駆られたが、客間には鈴木コーチがいるし、結婚後初めて僕以外の男に抱かれた佳純の心のケアも必要だと思って、それを思いとどまった。
結局、僕が静かに自宅を後にした後、鈴木コーチはもう一度佳純の身体を求めてきたと言う。しかし、その頃には僕はもう覗いていなかった。それに気が付いた佳純は、僕が覗いていないところでコーチとセックスをするのは裏切りだと考えて、2回目の行為は拒否したと言う。
「また・・・こうして会ってくれますか?」
セックスを拒んだ後、コーチはそう言った。可愛い佳純に惚れてしまったのか、それとも感情とは別のところで彼女の身体だけに溺れてしまったのか・・いずれにしてもコーチはこれ1度きりで関係を終わらせたくないと思ったのだろう。
「で、次に誘われたらどうする?」
「どうするって・・・しないよ、もう・・・これで啓祐も満足したでしょ?」
「ああ、そうだな・・・」
鈴木コーチが佳純にハマりかけているとなれば、何度も関係を持つのはマズい。本気で惚れられては困るのだ。
だから僕は、佳純の言う通り、鈴木コーチと2度目の行為をする必要はないと賛同した。
「それにしても、結構始まるまで時間がかかったじゃないか」
僕は佳純に言った。
「それは・・・その・・・」
途端に言葉を濁す佳純。何か言い難い事でもあるのだろうか。
「何してたんだ?」
「け、啓祐に言われた通り・・・少し薄着になって・・・それから・・」
「それから?」
「コーチにお酒を出して・・・それを私も少しだけ飲んで・・・」
ここまでは僕の指示した通りだ。人間、おもいきり一線を越えるためにはアルコールの力も必要だろうと思ったのだ。
「で・・・?」
「そしたら急に後ろから抱きしめられたの・・・」
「だろ?そうなると思ったよ」
「それで、そのまま・・・エッチされそうになって・・・」
「食卓テーブルで?」
「うん・・・」
「若いなぁ・・・ベッドまで我慢できないってか?」
「そんな感じだったよ・・・」
「それでどうしたんだ?」
「なんだか・・・コーチの事が怖くなって・・・それで・・・」
それまで優しかったコーチ。それが佳純の薄着から覗く深い胸の谷間や、短いスカートから覗く白い脚・・・おまけに夫が居ない状況、まるで誘っているように見える人妻・・・それにやられて急にギラギラしだしたのが怖かったのだと佳純は言った。
「だから、お願いだからシャワーをさせてってお願いしたの」
「それで納得したか?」
「我慢できない・・みたいな事言ってたけど、何とか・・・」
好青年だと思っていたが、やはり男は男だ。彼はまだ若いし、責める事は出来ない。しかし、なかなかどうして、あんな優しい顔をしていても、いざとなるとやってくれる。まぁ、そのおかげで僕はものすごい興奮を手に入れた訳だが・・・。
「それから・・・2階のベッドへ行ったの」
「そこから先は知ってるさ、全部見てたからね」
「・・・・・」
「随分気持ち良さそうだったじゃないか」
「そ、そんな事・・・ないもん」
「そうか?コーチに舐められて、佳純がイク姿も全部見てたぞ?」
「そ、そんな・・・だって・・あれは・・・」
「気持ち良かったんだろ?」
「・・・・・うん」
「コーチのアレはどうだった?」
「アレって?」
「アレと言ったら、コレだよ・・・コレ」
僕は自分の股間を指差しながら言った。
「どうって・・・普通だよ」
「大きかったか?」
「そんなの・・・」
「俺と比べてどうだった?」
「そんな・・・大きさは変わらないよ・・・」
大きさは?大きさ「は」と言う事は、他に何かが僕と違ったと言う事か?相変わらず嘘や隠し事の下手なやつだ。
「大きさが同じくらいなら、他に何が違ったんだよ」
「え?・・・何も・・違わないよ・・・」
佳純は僕から目を逸らしながら言った。
「佳純・・・隠し事はなしにしようよ、せっかくここまでしてくれたんだからさ、本当の事を教えてくれよ・・・」
「・・・・・硬かった」
「ん?」
「だから・・・啓祐のアレより・・・ちょっと硬かったと思う・・・」
なるほど、さすが若者だ。興奮して、普段の僕よりもガチガチに硬かったと言う訳か。
(コーチと佳純の行為を盗み見ている時の俺だってスゴかったんだぜ?)
内心そう思ったが、それを口に出すと負け惜しみのようで嫌だったから、僕は口をつぐんだ。
「ねぇ、これでお仕事頑張れるんだよね?」
佳純が潤んだ目で僕を見上げながら、心配そうに言った。
「当たり前だろ?佳純が驚くくらい仕事してきちゃうよ」
「そう・・そっか!良かった!」
それまで、どこか不安気な表情を残していた佳純が笑った。僕はその会心の笑顔が愛おしくて、佳純を力いっぱい抱きしめた。
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