妻がアルコールでほんのりと赤い顔をして帰宅したのは、間もなく23時になろうかと言う頃だった。
いつもの飲み会の帰宅時間とそう変わらなかったから、課長さんと妻の間に特別な事はなかったのだろうと思う。
そもそも、妻は酒に強いから、勢いで男性にお持ち帰りされてしまうなんて経験は皆無で、もしもそうなる時は妻も覚悟の上での事だから、今日の時点でそれが望めない事は僕も解っていた。
だけど、帰宅した時の何とも言えない彼女の表情を見て、先日僕と約束した「課長さんとのお話」があったのは間違いないだろうと思った。
そう思っただけで、股間に血液が集まってくるのを感じる。久しぶりの高揚感に襲われる僕。しかし、妻には「インポの夫」で通さなければならないから、その高揚感を抑えつつ僕は彼女に近づいた。
「どうだった?」
そう一言たずねる僕。それだけで、僕が何を訊きたいのか妻には理解できたようだ。
「うん・・・恥ずかしかった」
妻は一言そう言った。
「課長さん・・・酔っぱらってた?」
「うん・・・結構・・・」
「エッチな話・・・された?」
「うん・・・」
「それで・・・どうした?」
「・・・どうしたって」
「きちんと答えた?」
「孝介がそうしろって言うから・・・頑張った」
「そっか」
僕はそう言いながら、妻の頭をくしゃくしゃ撫でた。それから耳元で「ありがとう」と言ってから、頬に軽くキスをする。
「2階で待ってる」
それだけ言って浴室に入る妻を後目に、僕は寝室へ上がって行った。
※※※
シャワーを終えて寝室に入ってきた妻は、無言のまま、僕に背を向けるようにしてベッドに入った。
「今日は何の飲み会だったの?」
その妻の背にさっそく飲み会の話を持ちかける。
「産休に入る娘がいるから、出産頑張れ会・・・みたいな、そんな感じ」
「へぇ、だって妊婦さんはお酒飲めないでしょ」
「理由なんて何でも良いんだよ、みんな。ただ理由を作って飲み会したいだけだもの」
そう言って妻はクスリと笑った。
空気が少し和んだのを感じた僕は一気に本題に入る。
「課長さんに・・・何訊かれた?」
「・・・・・色々」
その一言で済まされてはさすがに興奮のしようもない。
「じゃあ、覚えてるだけで良いから・・・最初に何訊かれたの?」
「・・・旦那さんとエッチしてるのかって」
「いきなり?」
「ううん、綾乃さんは30代に見えないね・・・とかってお世辞いいながら・・・ちょっとずつ・・そう言う話に・・・」
「ちょっと待って、課長さんに綾乃さんって呼ばれてるの?」
「え?そうだよ?」
「へぇ」
僕の会社では女子社員同士は名前で呼び合ったりもしているが、男性社員がそんな事をしようものなら、セクハラだと騒ぎそうな女子社員がたくさんいるから意外だった。
互いに苗字か役職で呼び合うのが常識だと思っていたから、ちょっとした驚きだ。
「普通に名前で呼び合ってるよ?課長さんや係長さんは役職で呼ぶけど、男性社員なんかは私も名前で呼ぶけど・・・」
そう言いながら妻が振り向いて僕の方を向いてくれた。どうやら卑猥な話でなくなったのが良かったようだ。
「綾乃も名前で呼ぶの?なんて?」
「孝介君とか・・・そんな感じで・・・変?」
「いや、変じゃないけどさ」
妻の勤める会社は大企業と言う訳じゃないけれど、支店なんかも構えていて、いわゆるファミリー企業でもないし、僕が勝手にイメージしていたのと違ったから驚いただけで、まぁ変ではない。
ただ、下の名前で呼び合うなんて、どっかの大手男性アイドル事務所みたいだなぁなんて思う。
「それで?課長さんはなんて?」
「あ、うん・・・」
急に話題を戻されて照れくさいのか、綾乃は布団を深くかぶって表情が僕から見えないようにする。
そんな恥ずかしそうな妻の姿を見ているだけで、僕は自分の中にムクムクと欲望が湧き上がるのを感じた。
※※※
「綾乃さんは30代には見えないねぇ、旦那さんも離してくれないでしょう」
「そんな事ないですよ」
「またまたぁ、旦那さんも身体が持たないだろうね、奥さんがこんなに美人だと」
「どうしてですか?」
「だって、疲れて帰っても、家に美人の奥さんがいたら頑張っちゃうだろ?」
「頑張る?」
「だから、アッチの方を・・・さ」
話を聞いていて思ったのだが、ウチの妻は鈍い。だから、遠回しに卑猥な話をされてもなかなか伝わらないから、男は最終的に、核心に近い事を言わざるを得ない。
こう言っては何だけど、かなり際どい話にまで発展してしまうのは、妻の天然な部分にも原因があるような気がする。
「そんな・・・仕事で大変そうだから、そんな頑張らないです」
普段の妻なら、この辺で話をかわすところだろうが、今日は僕との約束をきちんと守って、課長さんにそう返答したと言う。
「いくら仕事が忙しくても、少しは頑張るだろう?」
「頑張らないです」
「最後に頑張ったのはいつだい?」
「・・・・・1カ月くらい・・前・・です」
恥ずかしさを噛み殺して正直に答える妻。そうなのだ、本当に仕事が忙しくて1カ月ほど夫婦の行為はないのだ。
「まだ若いのに、そんなに無いの?」
「・・・・・はい」
「勿体ないねぇ、旦那さんはよく我慢できるねぇ」
「我慢・・ですか?」
「そうだよ、目の前に魅力的な奥さんがいたら、どんなに疲れていても我慢できないものだと思うなぁ、きっと旦那さんは次の日の仕事を考えて我慢してるんじゃないか?ウチの社員にも見習わせたいね」
視界の中で酔って大騒ぎする自社の社員を眺めながら課長はそう言う。部屋の隅で卑猥な話に興じる妻と課長の姿など目に入っていないかのようだ。
「そんな・・・私に魅力がないから大丈夫なんですよ、きっと」
「それは違うよ、断言できる、綾乃さんは魅力的じゃないか」
「そんなことありませんよ」
「美人だし、スタイルだって良いじゃないか」
「・・・そんな」
「胸だって結構あるだろう?」
「そんなに無いです・・・よ」
「そうかなぁ、どのくらいだい?サイズ」
「え?」
「いや、女性にはありがちだけど、自分では無いと思っていても、男性から見たら十分・・・なんて事は良くあるもんだよ、だからサイズはどのくらいなのかぁと思ってさ」
「・・・・・最近、測ってないから」
「最後に測った時のサイズは?」
「・・・CとかDとか・・・下着の種類によって違ったと思います」
「ほら、やっぱり、十分じゃないかそれだけあったら」
職場の上司にバストサイズを打ち明ける妻。
もう、ここまで聞いただけで、僕は信じられないほどに興奮していた。
実際にその場に居た訳でもないし、2人の会話を生で聞いていた訳でもない。ただ、ベッドにゴロリと横になって、妻の口から、その時の様子を聞きだしているだけだと言うのに・・・。
「それから・・・?」
僕は早く先が聞きたくて妻を急かせつつ、ギンギンに勃起している事が妻にバレないように俯せの姿勢になった。
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