「じゃあ、お疲れ様でした。お先に失礼しま~す」
|橘 ゆり子《たちばな ゆりこ》はそう言ってアルバイト先のコンビニを後にした。
アルバイト…とは言っても、ここの所の不況のお陰で他に職のないゆり子にとっては、ここでの勤務が生活の大半を占めていた。
もう正社員として雇ってもらう事は諦めていた。年齢も今月で28歳になったし、特別な資格を持っている訳でもない。
それに実家での生活だったから、コンビニのアルバイトでもそれなりに満足な水準の生活を送る事が出来ていた。
それに、30歳を迎える前には結婚する|つもり《・・・》でいた。
深夜帯のシフトには男性アルバイトが入る。
とは言っても、もう時間は20時。十分に暗くなった夜道を1人自宅へ向かって歩くゆり子の頭の中には、今日の昼間、慌ただしく店へやってきて、慌ただしく出ていった1人の男の子の事が離れずにいた。
※※※
昼間、ゆり子がレジに入っている時にその男の子は店へやってきた。
そして他には目もくれずに、簡単な薬品や化粧品などが陳列されている棚へ足早に歩いて行ったのだ。
(余程急いでいるのかな…)
ゆり子はその男の子を見ながら思った。
だが、足早にゆり子の待つレジへ彼が持って来た商品は薬や化粧品ではなく…コンドームだった。
勿論、コンドームが売れる事は珍しくないし、それを高校生くらいの男の子が買う事も珍しい事ではなかった。今時の子は高校生くらいで初体験を済ませる事も多いだろうし、実際にゆり子自身も高校3年の夏に初体験を済ませていた。
だが、正直な所、その男の子がコンドームを買っていく姿を見て、ゆり子は生々しくSEXを連想してしまった…昼間だと言うのに…。
タイミングも悪かった。
今月で28歳になったゆり子には、つい3か月ほど前まで5年以上も付き合っていた彼氏がいた。
「いた」と言う表現からも解る通り、3か月前に長く付き合ったその彼氏と別れたばかりだったのだ…原因は彼の浮気だった。
5年も付き合っていれば、勿論身体の関係もあった。
それに、付き合って長くなれば、マンネリを打破する為に少々普通じゃないプレイも試してみたりした事もあった。
最初、ゆり子はそうしたプレイもただ単に彼を性的に満足させる為に自分がお付き合いしてあげている…そう思っていた。
ところが、3か月経って、どうやらそれが違うらしい事に気が付き始めていた…SEXや、マンネリ解消の為…と思っていた行為を実はゆり子自身も欲していたのだと言う事に。
※※※
「あ~…姉ちゃん、お帰り~」
玄関に入ると、ちょうど弟の|俊哉《としや》がトイレから出てくるのにぶつかった。
「ただいま…」
ゆり子は、年の離れた弟の俊哉を事の他可愛がっていた。昔から喧嘩などした記憶も一切ない。ゆり子自身が反抗期を迎える中学、高校の頃も親と喧嘩になる事はあっても、弟の俊哉と喧嘩をする事は一度もなかった。
「疲れた顔してるよ…」
俊哉が心配そうにゆり子の顔を覗きこんだ。
「大丈夫よ…お腹空いただけだから…」
ゆり子はそう言って笑った。
「そっか…なら良いけどさ…」
そう言うと俊哉は、居間にいる母親に姉が返ってきたと報告して2階の自分の部屋に入って行った。
※※※
夕食を済ませると、ゆり子は1人浴室へ向かった。
家族の中で一番仕事の帰りが遅いゆり子はいつも一番最後のお風呂だ。
それでも、ゆり子はお風呂が好きだった。
湯に浸かって、ぼんやりとしていると1日の疲れがお湯に染み出るようだ。
だが、今日はお湯に浸かっていても「あの事」が頭から離れなかった。
今日、コンドームを買って行った男の子。
まさか、親の使いであんな物を買いに来た訳でもあるまい。
自分で使う為に買って行ったのは明らかだ。
(あんな…子供なのに…)
あの男の子は誰とあれを使うつもりなのか…初めて使うのだろうか…それとも買い足しに来たのか…。
どんなSEXをするのか…あんな風に見えて、本当はすごく愛撫が上手かもしれない…そんな考えが止めどなく浮かんでは消えていく。
(そう言えば、|俊《とし》君と同じくらいの子だったな…)
ゆり子は弟の俊哉とあの男の子が同じくらいの年齢だったな・・と何気なく思った。
(俊君も…彼女とかいるのかな…もうエッチとかシテるのかな…)
そんな考えが一瞬、頭に浮かんだ。
ほんの一瞬浮かんだだけだったが、その間にゆり子の脳裏には、弟の俊哉が見知らぬ女性とSEXに興じる生々しい映像も一緒に浮かんで消えた。
(ちょっと何考えてるのよ…弟のそんな姿想像して…変態みたいじゃない!)
ゆり子は勢い良く浴槽から出ると、手早く身体の水滴をふき取って自室へ入った。
※※※
自室へ戻るとゆり子はドサッと自分のベッドに倒れこんで天井を見上げた。
頭の中は、もう昼間の男の子の事ではなく、弟の俊哉の事で一杯になっていた。
無言で寝転んでいると、壁の向こうから話声が聞こえてくる…どうやら隣の部屋の弟が携帯で誰かと話している様だ。
(友達と…?…それとも彼女なの!?…)
いくら隣室でも話しの内容までは解らない。
弟の電話の相手が誰かなど解るはずもなかった。
解るはずもなかったが、ゆり子の中では電話の相手は女の子だと決めつけられてしまっていた。そしてその考えはどんどんと広がって、頭の中の俊哉は、浴槽で一瞬想像したあの時のように、弟のSEXを連想している…。
(また…こんな事を考えて…弟なのに…)
だが、その思いとは裏腹にゆり子は自分の胸の先の突起が硬くなるのを感じていた。
(私…俊君で…興奮してるの?…そんなこと…)
ゆり子は確認するように、自らの乳房の先端を触ってみた。
間違いない…そこは間違いなく硬く…ピンとしてパジャマを持ち上げていた…。
「あっ…」
触った瞬間、電流のようにゆり子の全身を快感が走り抜ける…。
思わぬ感覚…と言う訳でもないが、あまりに久しぶりのこの感覚に、思わず声が漏れて自分でも驚く。
驚いて、一度は手を乳首から離したゆり子だったが、今度は自らの意思でパジャマのボタンを上から3つ目まで外して、直接そこを触った。
(気持ちいい…)
3か月ぶりの感覚にゆり子は手を止める事が出来なくなっていた…。
ゆり子はパジャマのボタンをすべて外して前開きのそれを大きく開いた。
白くて形の良い乳房がゆり子の部屋の蛍光灯に照らし出されて、尚白く見える。
ゆり子は、両手で自分の左右の乳首を同時につまんでみた。
先程までの単純に2倍の快感ではなく、それはネズミ算式に4倍、8倍の快感となって彼女の身体を駆け抜ける。
(ダメ…止まらない…)
ゆり子自身、オナニーをした事がない訳ではなかった。
面白半分にしてみた事もあったし、レディコミを見ていて、何と無くそんな気分になってしてみた事もあった。
だが、3か月前に別れた彼と付き合うようになってからはピタリとそんな事はなくなった。
彼が、オナニーなどする気を起こす暇がない程にゆり子を頻繁に求める男だったからだ。
(そうだ…私、きっと欲求不満なんだ…だから俊君の変な姿まで想像して…)
ゆり子はオナニーをしようと決めた。
そう決めてしまうと行動は早かった。
いま入浴したばかりの彼女の身体は温まっていたし、パジャマのズボンを脱ぎ去る事に何の躊躇いもなかった。
ゆり子は自分の左手で右の乳房を揉み、時に硬くなった突起部をコリコリと摘みながら、右手で自分の下着の中へ手を入れた。
(…え…っ!?…)
自分で想像していたよりも、ずっとヌルヌルした感触がゆり子の右手に触れた。
(私…こんなに…)
ゆり子は慌てて、自分の下着を脱いだ。
今、お風呂上りに新しい下着に取り換えたばかりなのに、このままでは自分の愛液でグショグショに汚してしまう…そう思ったからだ。
壁一枚隔てた向こうでは、弟の俊哉の元気な話声が聞こえてくる。まだ電話で話しているようだ…あれだけ大きな声で話していれば、多少の声には気付かれないだろう。
ゆり子は改めて、自分でも驚くほどヌルヌルに濡れた自らの秘部に指を這わせた。
(気持ち良い…)
乳首に触れた時の何十倍もの快感がゆり子を襲う。
(あぁ…俊君…俊君…お姉ちゃん、俊君のすぐ近くでこんな事してるの…見て…)
ゆり子は自分自身が、してはいけない妄想に耽っているのを十分解っていた。
解っていながらそれを止める事は出来なかった。
まるで、そこに弟の俊哉がいるかのように脚を大きく広げて、恥ずかしく濡れた部分を妄想の中の彼に見せつけるゆり子…。
その濡れた部分の上の方で控え目に硬くなっているクリトリスを中指で弾く…。
「あ…あぁっ…」
また小さく声が漏れた…だが、隣の部屋では弟がまだ電話で話し込んでいるようだ。
聞こえはしない。
(俊君…お姉ちゃんのここ…こんなに濡れちゃってるの…触って…俊君…)
そう耽りながら、俊哉の指に見立てた自らの指を、今度は穴の中へ1本入れる。
「は…っ…ん」
大きな喘ぎ声が出そうになるのを堪えるゆり子…それでも小さな喘ぎ声が漏れた。
もうゆり子は自分でもどうしようもないくらいに興奮していた。
隣から聞こえる可愛い弟の話声、3か月ぶりの淫靡な快感…それに、ゆり子が右手を動かす度に聞こえる、この音…。
「クチッ…クチュ…クチュ」
自分の指と、アソコから溢れ出た愛液が奏でるその音に、ゆり子の興奮はさらに掻き立てられていた。
(俊君…指じゃ我慢できないよ…舐めて…お姉ちゃんのここ…舐めてぇ…)
弟はここには居ないが、指では我慢できなくなってきたのは事実だった。
(ダメ…舐めるよりも…そう…入れて…入れて欲しいの…)
ゆり子の秘部は、もう十分に男性のモノを受け入れる準備が出来ていた。
だが、悲しいかなここにはゆり子を満足させる男根がない…。
(あぁ…俊君…俊君のも舐めさせてぇ…)
ゆり子は自分の両手を激しく動かしたまま、弟の俊哉のモノを咥える自分の姿を妄想していた。
妄想の中のそれは実に男らしく、硬く、ゆり子の口の中に入りきらない…。
(俊君の…すごいよ…もうこんなに硬くなってる…)
弟のモノを咥えながら、妄想の中で卑猥に弟にそう語りかえる自分。
(ほら…ここよ…俊君…お姉ちゃんのここに入れて…)
「あ…っ…あぁぁぁぁ…」
思わず大きめの喘ぎ声が口から漏れた。妄想の中で弟が自分の中に入ってきた瞬間だった。
現実のゆり子は、自分の右手の中指と人差し指…この2本を蜜壺の中で根元まで入れては出し、出しては入れる。
その度に部屋に響く「ネチョっ、ネチョっ」と言う音。
(俊君…後から…後からお姉ちゃんを突いて…)
ゆり子は仰向けの態勢から、四つん這いの姿勢になって、尚も2本の指を出し入れし続ける。
(すごい…気持ち良い…)
実際、別れたばかりの彼にも必ずこの態勢から入れられていた。
「ゆり子はバックが好きだな…」
そう言われた事もある。
だが、今はもう別れた彼の事など頭の片隅にもなかった。
今、心の中で彼女の身体を抱いているのは弟の俊哉…。
ゆり子はその姿勢のままで、自らの濡れた部分をグチョグチョと刺激し続ける。
だが、それは自分の指ではなく弟のモノ…そう深く妄想していた。
あまりに深く妄想の世界に溶け込む余り、隣の部屋から弟の話声が聞こえなくなっている事にも気付かなかった。
(あっ…あっ…俊君…気持ち良い…お姉ちゃん…イッちゃう…イッちゃうよ…)
ゆり子は、四つん這いのままで限界の時を迎えようとしていた。
上半身には申し訳程度にピンクのパジャマを羽織っているだけ…袖が通ったままなので辛うじて脱げないでいる…下半身は何も身に着けない姿…・
そんな格好で四つん這いになり、白くて丸いキレイなお尻を蛍光灯の下に晒して脚を開き、開いた脚の中心に右手をのばして、気でも違ったかのようにその手を激しく動かすゆり子の姿…。
「ふ…っ…ん…」
悩ましい声が漏れる。
(もう…ダメ…イク…イキそう…あぁ…っ…俊君…イクッ…!!)
妄想の中で弟に向かって、そう叫ぶゆり子。
だが、思わず現実の世界でも最後の一言だけを口走ってしまった。
「…俊君…イクっ…!!」
最後にそう言うと、ゆり子自身の意思とは関係なくビクつく身体…。
高まってきた快感が頂点に達して、すべてがまっ白い世界へゆり子は落ちていった。
やがて、真っ白い世界から現実の世界へ戻ってくるゆり子…。
自らが、とんでもなくはしたない格好で右手を股間に置いている事に気が付いて慌ててパジャマのボタンに手をかける…。
「うわ…ベタベタ…」
ボタンに手をかけようとしたゆり子は自分の右手がヌルヌルとした液に塗れて汚れているのに気が付いた…先に手を拭かないと…。
ゆり子はティッシュで手を拭いて、それから乱れた衣服を整えた。
(気持ち良かった…これは…クセになっちゃうかな…?…)
そんな予感がした。
ゆり子はティッシュで拭いただけの手をきちんと洗うおうと、自室の戸を開けて洗面所へ向かった。
ほんの少し前まで、その扉の前に弟の俊哉が立ちつくしていた事など、今のゆり子には知る由も無かった…。
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